現地社員と駐在員をつなぐコミュニケーション手法

フランス人のマネージャーから最近こんな不満を聞きました。彼の会社の欧州本社はオランダにあるのですが、そのマネジメントチームの会議に出席すると、出席者は大半が日本人の在オランダ駐在員で、彼が発言するまでもなく、すでに決定が下されているのだそうです。

このような不満は、私たちがヨーロッパの日系企業とかかわってきた過去12年の間にも何度となく耳にしてきました。日系企業で現地採用社員が増え、ヨーロッパ出身者が高い役職に就くようになったのを受けて、状況が改善することを私は望んでいましたが、実際には現地採用管理職と駐在員管理職のコミュニケーションギャップは広がっているように見えます。現地採用の管理職者は、日本の本社で下される意思決定から阻害されていると感じています。

私はヨーロッパ出身のマネージャーに対して、意思疎通と人間関係を改善する3ステップのプランを提案しています。1にPepople、2にProcess、3にParticularsの3Pです。Peopleというのは、「人と人」の関係を日本人の同僚と作る必要があるということ。これには、ヨーロッパ拠点と日本の本社の両方が含まれます。もちろん、出張経費や駐在員の頻繁な入れ替わりなどの問題はあります。でも、根回しのプロセスに入ろうとするのであれば、お互いへの信頼感は必須です。

Processとは、根回しのプロセスをもっと明瞭にして、会議の目的(情報交換、話し合い、意思決定など)を明らかにする必要があるという意味です。そしてParticularsは、リスクを嫌う日本の幹部を説得するには詳細な情報やデータが必要だということを、現地採用のマネージャーが理解しなければならないという意味です。

現地採用・駐在員双方の努力が必要

日本人の駐在員も、欧州の子会社で起きていることを日本に報告することだけが仕事ではないと認識する必要があります。本社の企業風土、意思決定や戦略を伝え、ヨーロッパのスタッフが自分も大きな会社の一員であると感じられるようにしなければなりません。

日本人駐在員に対しては、1にDebate、2にDistill、3にDisseminateの3Dを勧めています。ヨーロッパの人たちは、ディベート(討論)が大好きです。意見を言うことで、自分が尊重されていると感じるのです。それにディベートは、日本から送られてくる意思決定の背景や論理を説明して、ヨーロッパの人たちに会社の方向性を説得するチャンスでもあります。

Distillは「蒸留する」という意味ですが、ここでは会社の戦略や文化、意思決定を明瞭・簡潔にまとめることです。日々の業務行動を判断する際の「礎」となるもの、すなわち「行動可能」な情報にまとめることが重要です。
Disseminateは情報を伝播し広めること。具体的には、前のステップで明確に打ち出した戦略、文化、決定を欧州全域の社員に伝えるため、実践的なステップを踏むことです。会社が大陸欧州に典型的なヒエラルキー組織の場合は、正しい命令系統を通じて情報を流す必要もあるかもしれません。または、ワークショップを使って社員にオーナーシップ意識を植え付け、戦略や文化が自分の仕事にどう関係するかを理解できるようにするのも、ひとつのやり方です。さらに、最初の2つのDがすでに行われたのであれば、ミーティングを増やして、今度こそは出席者全員が結論を受け入れやすい環境にすることができるでしょう。

関連記事