私はこのGaijin Days blogの記事がお気に入りです。この記事には、ある外国人が六本木のAlmondでメニューに載ってない品を頼もうとしたときの面白おかしい不運な出来事について書いてあります。(実際にそのレストランで食べる人がいるのだろうかと思わずにいられませんが、話が脱線するのでその疑問は置いておきます)

外国人が日本のレストランに行って、メニューを変更してもらえるものだと考えていたら、絶対に変更不可能な「神聖なセットメニュー」に遭遇するというエピソードは、他でも聞いたことがあります。多くの場合このような出来事は、ランチタイムのセットメニューを中心に展開するようです。例えば、外国人がレストランに入ってきて、「Aセットのサラダと、Bセットのメインと、Cセットのデザートください」と注文したとします。このような注文は、アメリカだったら全然普通のことなのです。なぜなら、たとえどんな風変わりな注文でも、レストランはお客さんのニーズに応えるのが最優先だとされているからです。ほとんどの大人は、あの有名なバーガーキングのキャッチフレーズ「Have it Your Way(お好みで召し上がれ)」や、そのバックで流れるCMソングを覚えています。~ピクルス抜き。レタスも抜き。特別な注文、何でも聞くよ~ しかし日本でこのような注文をすると、お店の人に迷惑顔をされることがほとんどです。「ふざけてるの?」みたいな。

 このような状況に見られるような、日本お決まりの柔軟性に欠けた対応を説明する理由として、私はいつも次の二つを考えます。ひとつには、日本では決まったルールを守らなければならないという意識が強いから。もうひとつは、レストラン側の方がお客さんよりも、どのような形で料理が食べられるべきかを知っていると考えられているから。つまり、これらのセットメニューは、レストランのシェフによって、様々な風味の組み合わせの考慮のうえで考案されたものなので、客がそれを変えようとするなんて信じられない、ということです。極端に言えば、このような考え方は、日本のお寿司屋さんなどでよく見られるの「おまかせ」スタイルのようなものだと思います。つまり、客が料理のすべてをシェフに任せるというやり方です。似たように、最近アメリカのお寿司屋さんでも、向こう見ずにカリフォルニアロール(アボカドとカニカマが入った寿司らしからぬ巻き寿司)を頼んだり、不躾にも携帯電話で話したりしている客を店内から追い出すtyrannical chefs(専制的シェフ)が登場しました。

 日本は基本的に、どこに行っても「お客様が神様」なので、きっとこのようなレストランでの対応は例外なのでしょう。それに、日本は極端なグルメ文化の国なので、シェフの知識が何よりも重んじられています。もちろん、AB Cなどと名づけられたランチセットを置いているようなレストランは、グルメなところとはいえないかもしれません。しかし、そのような手ごろなレストランにおいてでさえ、日本の食文化に対する姿勢のようなものが現れているように思えます。

 このようなシチュエーションについて考えていると、昔NPR(米国の国営公共ラジオ)で聴いた面白いインタビューを思い出します。ある日本人のチームがアメリカでレストランのコンセプトを探していました。彼らは、私がシカゴに住んでいたときにすぐ近所の角にあった、Murphy’s Red Hotsという表のデコレーションがかわいいホットドッグのお店を見つけ出しました。彼らはこのお店のオーナーであるマーフィー氏と契約を交わし、東京にチェーン店をオープンすることにしました。ラジオのインタビューの中でマーフィー氏は、オープニングのために東京を訪れた時の話を詳しく話していました。シカゴのアクセントで話す真のシカゴ・ガイである彼は、日本についてとても面白い見解を持っていました。記憶している部分を最後に書いてみます。

 パーフェクトなシカゴ・スタイルのホットドッグを作るための正確なトッピングの組み合わせが、日本的な几帳面なやり方で分析された。その結果、すべての客にはまったく同じトッピングが乗ったホットドックが出されることになった。オープニング直後のあるとき、一人のアメリカ人が、本格的シカゴ・ホットドックというアイディアに魅せられて店に入ってきた。彼は注文するとき、「オニオン多めでレリッシュ抜きで」と付け加えた。店員はこの注文にすっかり当惑し、その場に立ち尽くしてしまった。それまで中心から外れてお客さんへ挨拶に撤していたマーフィー氏は、そのやり取りを聞いて、自分の出番が来たとばかりに袖をまくってやってきた。呆然としている店員に「ここは僕に任せて」と言い放つと、彼女の代わりにカウンターに立った。



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