AIと専門能力開発

AIについて書くのをこれまで避けてきました。「一度噛まれると二度目は用心する(once bitten twice shy)」という気持ちが働いていたためです。というのも、今から25年前にAIに噛まれたことがあるのです。日系企業を退職してイギリスの技術系スタートアップに転職した時のことでした。

この会社で私は、医師、会計士、弁護士などの専門職者向けにオンラインの学習環境を提供するという新規事業のアイデアを提案しました。イギリスでは、専門職者が職業資格を維持するために年30時間前後の「継続的な専門能力開発」が義務付けられています。実践方法は個人に委ねられていますが、新しい専門知識を学習したことの証明が求められます。

私たちのアイデアは、オンライン環境を開発してユーザーが職業関連の研究を行った記録を提供するというもので、AIのアルゴリズムに基づくインターネットの検索ツールで記録を自動生成することを目指しました。

当時すでにグーグルが確立していたため、私たちの課題は、なぜこのツールのほうがグーグルよりも効果的に専門職者のニーズを満たせるかを示すことでした。このツールを開発したAIの専門家が言うには、グーグルの検索エンジンは真のAIではなく、膨大なデータを運用する機械学習ツールで、文章の分析に基づく確率を使用してデータを合成し、意味のある反応を返すとのことでした。そして、自分のアルゴリズムのほうが、ユーザーが検索した言葉の本当の意味を理解しようとするという点で真のAIに近く、あまり公にされていないコンテンツも検索対象に含めることで包括的な答えをリアルタイムに返そうとすると説明していました。

残念ながら、それを証明する前にこの会社は倒産してしまいました。その後、Eラーニングは「指してクリックする」スライドショーを見たうえで多肢選択式のテストを受ける形式に進化し、主体的な学習や研究を奨励するものではなくなりました。

それから25年、Eラーニング企業に対する投資が大幅に減少したのは驚きではありません。学生が研究や論文執筆にAIツールを使用する世の中です。これらのAIツールは依然として大規模言語モデルで、既存のコンテンツを合成する能力に秀でています。けれども、良識のある専門職者は、なおもこのコンテンツを自分自身の知識にする必要があるでしょう。意味を確認し、自分なりの特色を出すだけでなく、最も重要な点として、学習したことを実践に移し、その影響を振り返る必要があります。

本記事は、2025年2月12日付の『帝国ニュース』に日本語で掲載されたものです。

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