先日、横浜にあるオフィスで来週実施するセミナーについてクライアントと話し合っていました。「セッション終了後にランチにお誘いしたいのですが如何でしょうか?いろいろ参加者の感想が聞けてよいと思うのですが」という質問に、喜んで招待を受けると返答しましたが、ランチについて一つだけ話しておかなければならないことが…
私は健康上の理由からグルテン(小麦や大麦に含まれるタンパク質)と乳製品を食べることが出来ないことを説明しなければなりません。そうすると日本での典型的なランチ、サンドイッチ(パンがダメなので)やお弁当(大抵天ぷらやパン粉を使ったおかずが入っていて、それからお醤油にも小麦が入っています)というオプションがなくなってしまいます。
特別扱いをお願いするトラブルメーカーにはなりたくありません。みんなと同じものが食べられるとどんなに楽だろうと思います。では、私はなぜ食べ物にこんなに神経を使うのでしょうか?
2018年に私は自己免疫疾患のバセドウ病(甲状腺機能亢進症)と診断されました。タイプAの性格の人がかかりやすい病気ということで、なるほどと思いました。いろいろ調べた結果、ニューヨークタイムズ紙のベストセラー『The Autoimmune Solution 』(Dr. Amy Myers著)に辿り着きました。この本の中で著者は、当時日本ではよく知られていなかったけれどもアメリカでは最先端の知識として、自己免疫疾患は腸への刺激物に対する炎症反応が原因であり、グルテンとカゼイン(乳製品に含まれるタンパク質)が特に元凶であると指摘しています。その後原因を特定するためのテストを受けましたが、やはりグルテンに対して陰性反応が確認されました。(乳製品に対しては類似したテストが存在しないため、自分で乳製品を食べた時と食べない時を比較したところ、食べた時に甲状腺抗体が倍に増加したため、やはり乳製品は避ける必要があると自覚しました。)
それから私のグルテンフリーとデイリーフリーのダイエットが始まりました。つまり、小麦粉の入ったパン、麺類、ケーキやクッキー、醤油(グルテンフリーの醤油はOK)、麦茶、牛乳、チーズ、ヨーグルトは全滅です。制約だらけですが(特に餃子、ピザ、ゴートチーズが食べられないのが残念です)効き目があったようで、症状がおさまってきました。2019年からメチマゾールという飲み薬も併用していましたが、先日東京で診てもらっている医師から、甲状腺ホルモンが安定して抗体が通常レベルに戻ってきたのでもう薬は飲まなくてよいと言われました。グルテンと乳製品を避けることで腸への刺激を緩和して薬の効果が増強されたということです。せっかく薬から卒業したので、逆戻りしないためにも、グルテンフリーとデイリーフリーのダイエットをきっちりと続ける必要があります。
テニス選手のノバク・ジョコビッチもグルテンフリーのダイエットを行っているので、日本でもグルテンフリーについて聞いたことのある人が若干存在します。彼はこのダイエットがパフォーマンスの向上につながっていると語っています。しかし大部分の日本人はグルテンとは何かを知らないようです。日本人は白人に比べてグルテンを避けなければならないセリアック病に遺伝的な理由でかかりにくいことが原因でしょう。日本国外では、グルテンに対する過敏症や自己免疫疾患を含むアレルギー症に高い罹患率があるため、一般的な認知度も高いようです。アメリカやヨーロッパでは人口の8~12%がグルテンフリーのダイエットを実行しているという統計があります。グルテンフリーのレストランも比較的簡単に探すことが出来ます。(日本にもグルテンフリーレストランが幾つかありますが、いつも非常に混んでいます。日本人以外の客層を増やしたいと考えているのであれば、日本のレストランもグルテンフリーのメニューを提供するのがよいと思います!)
小麦と乳製品が大好きな国に住んでいる私は一体どうしているかというと、幸い料理が好きなので家庭料理に精を出しています。クライアントとランチする時は、みんながお弁当を食べている傍らで、迷惑をかけないように自分用のランチを持参することもあります。
小麦や大麦、乳製品がなくても、その他にいろいろなものを食べることができます:
- 肉や魚
- 豆腐や豆類
- 卵
- ご飯、コーン、そば、キノア
- フルーツや野菜
- ナッツやタネ類
- バターはカゼインを含んでいないので大丈夫
- ミルクの入っていないチョコレート
それから、両方ともカタカナで表記されたダイエットの種類ということで、グルテンフリーとビーガン(動物性食品を一切食べない)を混同している人も多いようです。先日ビジネスで会食したのですが、前もってグルテンフリーと連絡していたものをビーガンと混同されてしまったようです。周りの人たちがメインコースで美味しそうなステーキを食べている傍らで、私には小さなポルトベロマッシュルームが運ばれてきました。ソースさえかけなければステーキはしっかり食べられるのに、とお腹をぐるぐる鳴らしながら嘆いたのは言うまでもありません!
最近は日本でもグルテンフリーのレストランや、グルテンフリーメニューのある弁当宅配サービスが存在するようになってきました。GoogleやGoogleマップで「グルテンフリー」と入力すると、結構見つかります。前もって連絡することで、グルテンフリーに加えてデイリーフリーにしてくれるところもあります。感謝、感謝です!
加えて、次のようなレストランでは比較的楽に食事をすることができます:
- 焼き鳥(タレではなく塩で食べる場合 = タレには醤油が入っているので)
- 焼肉(こちらもタレなしで)
- ステーキ(ステーキソースなし)
- 焼き魚(塩焼きで醤油のタレに漬け込んだものではないもの)
- 刺身(ワサビのみで醤油は使わない、または胡麻油を少し垂らして)
- しゃぶしゃぶ又はその他の鍋類(出汁に小麦が含まれていないもの)
- 10割蕎麦(小麦の入った蕎麦と一緒に茹でない)
- サラダ(クルトンなし、チーズなし、乳製品または醤油を含まないサラダドレッシング)
- 居酒屋のメニューには大抵何か食べられるものがある(居酒屋は大好きなのでラッキー)
- タイ、ベトナム、韓国、スペイン、メキシコ料理店には大抵何かグルテンフリーのメニューがあり、またピザとパスタとチーズを食べなければ、イタリア料理店にもグルテンフリー、デイリーフリーのメニューが大体何かある
- インド料理でカレーを手作りする場合はグルテンフリーかも知れない。日本のカレーは残念ながらグルテンが入っている
- 外国人客の扱いに慣れているインターナショナルホテルチェーン(ヒルトンなど)はグルテンフリーメニューがある
- ビーガンまたはヘルスフードレストランでたまにグルテンフリーのオプションがある
- どうしてもグルテンフリーがない場合はあつあつのご飯に生卵をのせたTKGが最高!
グルテンフリーのレストランでも、混入の心配がまったくないわけではない、と言われることがあります。でも私はその程度のリスクなら迷わずに取ります。セリアック病の人たちはほんの少しでもグルテンを摂取すると強いリアクションが起きますが、私の場合はそうではありません。アナフィラキシーショックを起こして死んでしまう、というのではありません。でも多くのレストランが「アレルギー」という言葉を聞くと非常に気を遣うのが実情です。私の体調は今安定しているので、ほんの少しのグルテンまたは乳製品が混入しても大丈夫です。でもそれらが主な食材として使われていると、免疫システムの反応が積み重なって、自己免疫疾患が再発してしまう恐れがあるので、それは避けなければなりません。
日本は特別な食事制限のある人にとって住みやすい国ではありません。周囲に合わせて、目立つことをしないで、他人が不便に感じないようにすることが重要だからです。ある時、健康上の理由から小麦を避けないといけない日本人に会ったのですが、その人に同僚とビジネスで食事に行く時はどうするのか尋ねたところ、「特別扱いしてもらうのは気が引けるから、何も言わないで小麦が入っていても食べてしまう」との回答が返ってきました。日本の文化的背景から考えると、日本人はそのような行動を選択するかも知れません。私は日本人ではないので、その点すこし得をしているかも知れません。自分の健康に障害が出てしまう行動を自分から進んで取ることは、どうしてもできないのです。 個人的には、どんな食べ物を食べるかはダイバーシティの一環だと考えています。日本に住む、または日本を訪問する非日本人が増加するにつれて、グルテンフリー、ビーガン、ハラルなど様々な食事制限のある人たちが増えてきています。私も食事制限にこだわりたくはありませんが、自分の遺伝子を変えることはできないので、こだわらない訳にはいかないというのが実情です。わがままに聞こえるかも知れませんが、ご理解いただけると本当に助かります!
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