先日、MBA課程で学ぶ日本人留学生のグループに対して、在外の日系企業で働くことについて話をする機会がありました。私はコミュニケーション問題について触れ、単に言葉の壁だけではなく、多くのことを暗黙の了解で進める日本のコミュニケーションスタイルが海外ではうまく伝わらないという問題があることを説明しました。こうしたなかで、外国在住経験のある日本人のMBA取得者は、日本の親会社と外国の現地法人の異なるコミュニケーションスタイルのブローカーとして存在価値を発揮できると、私は強調しました。
その後のディスカッションでは、なぜ日本の若者が留学や海外就職をしなくなっているかに必然的に話題が及びました。ある学生が言ったのは、外国に住んで日系ではない会社に勤めた経験があるにもかかわらず、ひょっとするとそれゆえに、日本企業での就職ができないと感じているということでした。「私のような社員がうまくやっていけると思ってもらえないのです」と、彼女は言いました。
会の終わりに一連の名刺交換をした際、この学生は、フェイスブックをやっているからぜひ見てくださいと言いました。これを聞いて私は、最近読んだある記事に日本人のフェイスブック・ユーザーの多くが海外在住の日本人だと書かれていたことを思い出しました。私が思うに、欧米ではフェイスブックが友達との連絡方法として一般的に使われているという事実もさることながら、長くにわたって母国を離れて暮らすような人は天性のネットワーカーである可能性が高く、ゆえにソーシャルメディアにも積極的に参加する傾向にあるのではないでしょうか。
生まれ育った国を飛び出した人にとって、連絡を取り続けることは重要です。これは、母国にいる友達や親戚とだけでなく、新しい国で知り合った友達との連絡にも当てはまります。各地を転々としても、音信不通にならないようにするためです。
また、長い間外国に暮らした人は、社会学で言う「弱い紐帯」を厭わない傾向にあるのではないかと思います。弱い紐帯とは、友達でも親戚でもなく、知り合いという程度のつながりです。グリーやミクシィは日本で人気のソーシャルネットワークですが、最近の調査によると、これらのサイトのユーザーが友達としてつながっている相手は平均29人で、フェースブックの全ユーザーの平均130人に比べて著しく低いことが分かりました。
世界を股にかける「グローバル・スパナー」は、このような弱い紐帯をたくさん持っている一方で、緊密なグループにも所属していて、それらの間の架け橋となることができます。つまり、日本企業ではグローバル・スパナーが、日本の本社の同僚や海外現地法人の同僚と強い紐帯を持てる可能性があるのです。彼らの弱い紐帯が他のグローバル・スパナーにつながっていれば、2つの内向きグループの間にコミュニケーションのラインを開くことができるでしょう。
ただし、以前のこの連載でも申しあげたとおり、日本企業の問題は、グローバル・スパナーのようなタイプの社員をしばしばアウトサイダーとして懐疑的な目で見て、内輪のグループに入れようとしない点にあります。これは日本だけでの問題ではありません。アメリカのオバマ大統領は即座に同意するでしょう。けれども、日本は特にその傾向が強いように見えるのも確かです。
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