アフリカで日本企業がベンダーとして登録するためのプロセスは、私が過去20年間に体験したなかで最も複雑かつ時間のかかる部類です。信頼を築くうえでコミュニケーションがいかに重要かをあらためて教えてくれました。
提出を求められた書類の多くは、イギリスには存在しない書類で、記入した書類のほとんどは、アフリカの国の政府と私の会社に何らかの関係があるかどうかを尋ねる内容でした。たとえ関係があったとしても、嘘を書けばそれで済んでしまいそうな感じがしました。
サプライヤに対する信頼が欠如している理由は、イギリスや日本と比べてアフリカには汚職や不正が多いからなのでしょう。しかし、最近の調査によると、先進国で最も信頼度の低いものとして企業、政府、メディアが挙げられていて、これはイギリスや日本でも同じです。
親しみやすさとソフト文化の助け
一方、イギリスと日本は、他の国から寄せられる信頼度が高い国になっています(ただし、イギリスはEU離脱後にわずかに低下しました)。他の国にとって、日本とイギリスは過去何世紀にもわたり馴染みがあるうえ、ふるまいが一貫していることが、信頼を高める一因となっています。日本は礼儀正しく、おもてなしの国であり続けていること、イギリスは民主的な法治国家であり続けていることが、一貫性を生み出しています。また、両国とも豊かなソフトカルチャーがあり、様々なポップカルチャーやスポーツを輸出することで世界への影響力を保っています。
確立された規範と制度
日本もイギリスも、それぞれの社会で信頼感を伝えるための様々な「信号」を作り出してきました。日本の場合は、服装やマナーなどの細部にまで配慮する姿勢を示すこと、そして会社のブランド名を大切にすることが挙げられます。イギリスの場合は、古くからある機関や職業協会が行動規範を確立して、そこに加盟する個人や組織の信頼を裏付けています。
でも、これらの信号は、一貫性のある規範や確立した組織がそれほど存在しない他国では、あまり通用しないようです。このため私は、プライドを飲み込み、「私を信頼してください。イギリス人ですから」と言いたい気持ちを抑えて(どのみち旧英領では効果がないことでしょう)、言われたとおりにしました。
最終的にアフリカのクライアントが電話に応じてくれて、要件を満たす方法を説明してくれました。たとえボックスにチェックマークを入れるだけのことですら、プロセスに従おうとする姿勢が、コミュニケーションと並んで、信頼を構築するための普遍的な方法です。
この記事は2024年7月10日に帝国データバンクニュースに掲載されました。
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