サイキック(霊能者)のところへ通っていた知り合いが、約束の時間に遅れそうだと連絡してから出かけました。やっと着いてドアベルを鳴らすと、ドアの向こうから「どなた?」という声。『サイキックなら分かるでしょうに』というのが話のオチでした。

コーチングのクライアントのほぼ全員が、「部下と話したいのですが、時間がなくて」と言います。時間に多少余裕があると聞くと、すかさず「話しました?」と聞きますが、たいてい「まだ準備ができてなくて」という返事が返ってきます。私は心の中で深いため息をつきます。

話したい内容をメモする習慣をつけましょう。しかし、メモがあっても、話がうまくいきそうなタイミングを見計らっているうちに、仕事が忙しくなり話せずじまい、というパターンもよくあります。ですから、何か気になることを見たり聞いたりしたらメモを取り、その事実がまだ新しいうちに、対話を持つように心がけましょう。「鉄は熱いうちに打て」です。

特に相手が日本人でない場合は、タイミングが非常に大切です。対話の時期が遅れると、『もっと早くに言ってくれていれば、もっと早くに直せたのに』『早くに直せていれば、評価がよくなり、ボーナスもよかったかも』などと、不満の種を生む可能性があります。

また日本の若い世代にも『私の上司、2ケ月もこのことを考えていたの?』と、あまりよい印象を受けない人が多いので、要注意です。

さらに時間がかかりすぎて問題を大きくする原因となっているのが、「部下の心が分からないので、考えているんです」という行動(しない)パターンです。

ごく少数の人を除き、私たちはサイキックではありません。ですから、言葉を交わさずに相手と分かりあうのは、ほぼ不可能です。分からないことは、聞くしかありません。また、自分の考えを部下に分かってもらおうと思えば、話すのが一番手っ取り早いのです。

それにしても、この「部下の心を読めなければならない」というプレッシャーは、どこから来るのでしょうか? 私の過去のクライアントに限って言えば、少なくとも原因の一端は「対話をする勇気がないから、頭でなんとか筋立ててみようとする」ことです。このプレッシャーから解放される方法はただ一つ。部下との短い対話です。長すぎるとつい余計なことを話してしまい、ポイントがぼけてしまいがちです。長くても25分で終わらせましょう。この5分(以上)の余裕が、相手が次の会議や作業にかかる前に、聞いた内容を落ち着いて考えるチャンスになります。上司のあなたもこの時間を利用して反省点をまとめておけば、次の対話に活かせます。

さて、夫と行くレストランから向かいのビルが見えます。ビルの左端は不動産屋ですが、以前はサイキックの相談所(?)でした。夫と「サイキックだった人が商売替えしたのかもね」と笑いました。もし、本当に同じ人がやっているのかどうか知りたければ、お店を訪ねて聞くしかありません。考えても事実は知りようがないのです。勇気をもって、部下や同僚に話しかけましょう。

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