イベントレポート Women in Agile Tokyo 2025: 多様性を活かすチームの作り方 〜 心理的安全性を高める具体的アクション

この記事では「Women in Agile Tokyo 2025」におけるプログラムの一つとして、2025年2月5日に品川の大崎ブライトコアホールで行われたロッシェル・カップの講演「多様性を活かすチームの作り方〜心理的安全性を高める具体的アクション」をレポートします。

それでは、まず講演者をご紹介します:

ロッシェル・カップ

ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティングの創立者兼社長。リーダーシップ、異文化理解と人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、グローバル企業の人材育成とチームビルディングを支援。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日系大手金融機関の東京本社における職務経験があり、現在日本企業2社の社外取締役を努めている。『DX時代の部下マネジメント―「管理」からサーバントリーダーシップへの転換』(経団連出版)をはじめ、著書は多数。

引き続き、講演の内容を以下にご紹介します。

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多様性イコール「女性社員や管理職を増やすこと」だけではありません。多様性とは、異なるバックグラウンドや視点を持つ人々が協力することで、新しいアイデアやより良い意思決定につながることです。しかし、多様な意見を活かすためには、心理的安全性の高い環境が不可欠です。

多様性の定義として、目で見える違い(人種、年齢、性別、外観、身体障害、出身国など)と目で見えない違い(教育レベル、職業、宗教、出身地域、仕事経験、人生経験、家族形態や状況、障害、性格、スキルと才能、弱み、敏感性、関心ごと、価値観、好み、LBGTQ+)があります。

単なる属性の違いではなく、視点や経験の違いに重要性があります。多様性のあるチームは、事実をより重視し、その事実をより慎重に処理することで、より革新的になります。

多様性がもたらす具体的なメリット(イノベーション、問題解決力の向上など)としては、次のような例を挙げることができます:

  • ジェンダーダイバーシティーとエスニックダイバーシティーの割合が1%増加すると、売り上げは前者で3%、後者で9%上がる
  • 女性取締役の比率が高い会社は、投資利益率、売上利益率、株主資本利益率において最も高い成績をあげている

アジャイルの成功には、こうした環境が不可欠であり、多様な視点を受け入れることでチームの適応力とイノベーションを促進します。

アジャイルの成功における多様な視点の重要性には、次のようなものがあります:

  • 異なる視点が創造的な解決策、より革新的なソフトウェアソルーションを生み出す
  • 異なる考え方を奨励することで、集団思考を避けてより良い解決策を見つける
  • アジャイルは反復とフィードバックを重視することから、幅広い建設的な意見の提供につながる
  • 多様なユーザーのニーズを理解しやすくなることから、幅広いユーザーのニーズに対応できる
  • 多様の視点があることで、デザインやテストのバイアスを軽減できる
  • 顧客視点の共感力を高め、より優れたユーザーエクスペリエンスを提供できる

チームの多様性を最大限に活かすためには、心理的安全性を提供することが重要です。心理的安全性とは、人々が自分自身を表現したり、ありのままでいることが快適な環境のことです。具体的な例としては、次のようなものがあります:

  • 恥ずかしさや報復を恐れることなく、安心して悩みやミスを共有できる
  • 恥をかいたり、無視されたり、非難されずに発言できる環境である
  • わからないことは質問することができる
  • 同僚を信頼・尊敬できる
  • 対人的な恐怖で行動が妨げられることがない

心理的安全性が確保されることで、他のメンバーとは異なるアイディアや考え方を持っている人も、安心してそれを共有できます。そうすると、他のメンバーも刺激されて、より多くのアイディアや視点につながり、結果的にイノベーションが増加します。心理的安全性がなければ、たとえ多様なメンバーがいても、異なるアイディアや視点から生まれる恩恵を受けることができません。

最後に、心理的安全性を作るための3つのステップをご紹介します:

  • 場の準備:安心して発言できる雰囲気づくり
  • 参加を呼びかける:人々が発言する機会を作る
  • 生産的な対応:発言への感謝や褒め言葉、否定的反応を許さない、問題提起や提案に迅速に対応する

これらは、当たり前のこと、簡単に実施できることのように感じるかも知れませんが、実際にはきちんと実施できている例は限られています。こうした環境づくりを徹底することが大切になります。

Q & A

Q:  心理的安全性が高まることで、いろいろな意見が出てきて、それらの意見を否定するのではなく受け入れることが大切とのことですが、そうすると収集がつかなくなるのではと懸念しますが、その辺についてお聞かせください。

A:  アイディアが多数ある場合は、委員会を設定してそこで検討するという方法もあります。すぐには出来ないことでも、なぜそうなのかを丁寧に説明して、フィードバックのループを閉じることが重要です。

Q:  たとえば AI の話とか、日本ではみんなすぐに飛びつくけれども、すぐに飽きてしまう傾向がありますが、(マイクロソフトの)牛尾さんが、アメリカではみんな徹底的に取り組むとおっしゃっていました。今回の多様性とか心理的安全性といったテーマも、日本とアメリカでは取り組み方に違いがあるのではと思いますが、どうでしょうか?

A:  アメリカでは学校の頃から、発言することやディスカッションに参加することが重視されているため、発言することに関して問題はないけれども、逆に他人に発言の場を与えることを学ぶことが重要だと思います。日本では、発言することに慣れていない人が多く、そのような人たちのためにも、心理的安全性は欠かせない要素であると思います。

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以上、「Women in Agile Tokyo 2025」におけるロッシェル・カップの講演「多様性を活かすチームの作り方〜心理的安全性を高める具体的アクション」のレポートでした。

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