
職場のハラスメントの事例に関してサポートを求める日系企業からの依頼が今年に入って大幅に増えました。日本でハラスメントと差別についての認識が向上していることが一因かと思われます。このため日系企業の海外拠点で働く日本人が問題に気付いて報告するケースが増えたのでしょう。
また、イギリスでも日本でも、多様性を尊重するインクルーシブな職場を作ることに関して以前よりもはるかに大きなプレッシャーが雇用主にかかっていて、人材を確保したいのであればこれが必須と見られるようになっています。
英国の新しい法律
このプレッシャーは、イギリスで2024年10月に施行された労働者保護法(2010年平等法の改正法)に反映されています。セクハラに対する労働者の保護を強化する内容で、予防のための「合理的な措置」を講じることを雇用主に義務付けています。
職場のセクハラは2010年平等法で禁止されていましたが、今回の改正法により、雇用主がもっと積極的に予防することが要求されます。
また、今回の改正法では、従業員がセクハラを訴えてそれが認められた場合に雇用主がその従業員に支払わなければならない賠償の金額が最大25%引き上げられます。
顧客などの第三者によるセクハラに対しても雇用主の責任を問う条項が盛り込まれていました。
「Reasonable Steps」とは?
「合理的な措置」の定義はこの改正法には含まれていませんが、「合理的」の概念はイギリスの法律では一般的です。たいていは、実際的で、職場の状況に見合った規模と内容であることを意味します。
つまり、最低でもセクハラに関する会社のポリシーを策定して定期的に評価すること、そのポリシーをすべての従業員に浸透させること、問題を報告するための方法を提供することを意味するでしょう。さらに、職場で受容される行動やセクハラが招く結果について全従業員に研修を施すことも含まれるかもしれません。
雇用主が第一にすべきことは、会社の文化(パーパス、ミッション、バリュー)にダイバーシティ、インクルージョン、互いへの敬意といった概念を組み込むことです。また、日本の親会社が海外のオフィスにトップダウンで文化を伝達するだけでは十分ではありません。パーパス、ミッション、バリューを現地の環境に応じて解釈し適応させる作業に海外の従業員が参加する必要があります。
究極的に今回の新法が言わんとしているのは、ポリシーとプロセスだけでは十分ではなく、文化も重要であるということです。
(本記事は日本語で帝国データバンクニュース(2024年9月11日号)に掲載されました。)
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