前回の「叱るべきか、叱らざるべきか」について、コメントをいくつかいただきました。「叱る」の意味に関することが多く、驚きました。改めて辞書で引いてみると、叱るとは「声をあらだてて欠点をとがめる(広辞苑)」です。

叱るのもコミュニケーションの方法の一つです。コミュニケーションでは、話し手が発信したと思っている内容と、聞き手が受信した内容とが違う場合があります。その場合、メッセージは、どちらの内容でしょうか? コミュニケーションを学問にした欧米では一般に、聞き手が受信した内容がメッセージです。このため、話し手が聞き手に分かるように話す責任を負い、リーダーには説得力が求められます。しかし、「聞く文化」の日本では、メッセージに行き違いがあると、聞き手の力が足らなかった、ということになりがちです。では、話し手が上司やリーダーで、聞き手が部下やチーム・メンバーの場合はどうでしょうか?

この場合は、話し手の情報量が聞き手の情報量より多い場合がほとんどですから、聞き手の情報量が少ないことを念頭に入れて、叱るべきか叱らざるべきかを判断することが必要です。

ある実例について考えてみましょう。部長が部下の間違いを指摘したところ、「それが間違いだということを知りませんでした」と部下に言われ、カッとしてしまったとのことでした。ですが、この部下は自分の現実を正直に話しただけかもしれません。「知らなかった」というのを、情報として受け取る余裕があれば、この部長は頭に血を上らせずにすんだでしょう。

次の問いに答えてみてください。

  • 「知らなかった」を情報として受け取った場合、どのような対応が可能でしょうか? 
  • あなたが部下を叱る前提となるのは、どんな状況でしょうか?

また、叱るの意味に「励ます」も入っているのではないかというご意見もいただきました。「叱ることで励ます」のは一つの技です。意図がきちんと伝わるように叱る必要があるので、言うべきことを事前に整理しておき、余計なことを言わないことが肝心です。そのためには、その場で𠮟りつけるのを避け、間をおいて別の場を設けるのがよいでしょう。

「叱る」に代わる選択肢の一つに、日本でも知名度を増してきたコンストラクティブ・フィードバックがあります。これは部下との対話を通じて「これを直せば、業績や評価があがる」と感じてもらい、モチベートするのが目的の一つです。これについては、別途書きたいと思います。

「その場で叱る」とそれ以外の選択肢の違いは、伝えたい内容を事前に明確化できているか、聞く耳を持ち、聞いた情報を活かす意図があるか、相手の要望を尋ねているか(双方向のコミュニケーション)、上司であるあなたにも行動を変える心づもりがあるかなどです。

業績向上と部下育成の視点から、叱ることが有効かどうかをケースごとにご検討ください。

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