日本から英国に来たばかりだと、どうして英国人は雨の中、傘をささないのだろうと思うことがありませんか。これは英国の雨が日本とは違うせいだと思うのです。英国の天気予報では‘一時的に小雨’’時には晴れ間も’または‘雨が降ったり止んだり’というような表現が使われます。決して日本の予報のように降水雨量を%で予想するようなことはありません。ここで降る雨は、日本の梅雨時の様な土砂降りや、何日も降り続く雨、という感じではありません。そんな訳で英国人には傘を持ち歩くことは億劫なのでしょう。英国では、外出先で必ずしも降られるか分からないし、また降ったとしても小雨である為、濡れてもすぐに乾きます。日本では湿気の高い夏などは、濡れてしまうと一日中じっとりとしたままになりかねない。こんな環境の違いが傘を持ち歩くか否かに影響するのでしょう。
典型的な英国式の‘どっちでもいいや’という無頓着さは日本では通用しません。もし天気予報が80%の降雨量を予測している時に、傘も持たずに出かけたとしたら、間違いなくあなたは余程の“おばかさん”か自分の面倒も見切れない“だらしない人”と思われるのが落ちでしょう。
同じように、あなたが仕事やお客様との会合に遅刻するようなことがあったら、これも間違いなく“自己管理が出来ない人”と一言で片付けられてしまいます。日本の電車はきちんと時刻表通り運行しますが、英国では電車はアテになりません。東京のように夜間道路工事をすれば起こり得ない交通渋滞も、ここではお構い無し、道路工事は白昼堂々と行います。
ヨーロッパでは南下するほど、人々の約束や締め切りというものの捉え方が大らかになるようです。スペイン語の“mañana”=また明日。後ほど。そのうち。という言葉は生活の一部として使われていますので、行動パターンも推して知るべしです。ヨーロッパでも北寄りに位置する英国の人は、時間厳守したいと思うものの、今ひとつ行動がついていかない事が多いのです。がんばっても色々な妨げが起こり得ることを考えると、最初からあきらめモードなのかもしれません。勿論遅刻する自分に嫌気がさすので、あれこれと遅れた理由をあげつらいます。そして確かにそういった説明が、時には同情を誘うのです。ところが日本でそんな行動に出たとしたら、前回のシリーズでお話した通り、全てが“言い訳”にしか聞こえません。
英国にある日系製薬会社で臨床試験を担当しているマネジャーが、以前こんな話をしてくれました。ある試薬プロジェクトが、多数の参加者が治験テストを途中放棄してしまうので、全く無駄になってしまったと言うのです。どうしてかと聞くと、車の故障、二日酔いで来れない、電車が動かない等の理由だそうです。通常、日本では参加者はちゃんと参加してくれるものです。でもこれを異国で期待すべきでは無いのかも知れません。日本人の同僚達は、これは彼女の不手際による失敗として、むしろ彼女のプロジェクトの管理能力を疑ったようです。私も英国人の見地から、このマネジャーは突然の不参加を予期して、定員以上の人数を予め用意すべきだったのではないかと思いますが!この例から見ても、日本人がヨーロッパの人と約束事を交わす際には、遅れる可能性を想定して、締め切り前後にたっぷりと時間的ゆとりを持つことが必要です。当然長く英国に住み慣れた読者の皆さんはこの“欧州スタンダード”を自ずから身につけておられるでしょうけれど。
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このシリーズは人材紹介会社のセンターピープルのご協力の上提供させて頂いております。
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