
第10回と11回で「叱る」をテーマに書きましたが、「叱る」以外の選択肢の一つで、最近日本でも実践する人が増えているのがフィードバックです。私が行うコーチングの方法の一つに、Growth Edge Coaching があります。これを提唱し、コーチを育成しているJennifer Garvey Bergerは著書 Changing on the Job で、フィードバックのことを役立たずの「 味噌△△サンドイッチ」と呼んでいます。しかし私は、フィードバックは学ぶに値するスキルだと思います。
なぜサンドイッチかというと、伝えたい「味噌」の部分をPositive なメッセージで包み、Positive – Constructive (Negative) – Positive という流れで行うからです。たとえば、部下のレポートに不満がある場合、「時間通りに提出してくれて、助かりました」と良い点を指摘した後、味噌の「改善を求める点」について対話をし、最後は「質問があれば、ミーティングを設定してください。喜んで相談に応じます」と支援する用意があることを伝えて、フィードバックを終えます。
フィードバックは部下をモチベートするのが主な目的です。この例では、「これを直せば、レポートの質が上がる」や「学んだことを実行すれば、評価をあげられる」などと感じてもらうことが肝心です。ですから、メッセージはポイントを1点に絞り、簡潔明瞭であることが大事です。その場で思いついたことを足さないようにしましょう。あれこれ話すと、本来のポイントが不明瞭になるだけでなく、「この上司はただ文句を言いたかったんだな」という印象を与えてしまい、上司としてのあなたの評価に傷がついてしまいます。
そしてこの「味噌」の部分が「叱る」と大きく違うのが、対話形式だという点です。
- あなたはこのレポートについてどう考えますか?
- 改善できる部分があるとしたら、何ですか?
などの質問に対する相手の答えで、相手の視点を理解してから、
- 一番大事なポイントは何ですか?
- そのポイントを明確に伝えるには、何が必要ですか?
などと質問します。日本語では「どうすればよいでしょう」などhow 系の質問が自然ですが、what が出てくる質問にすることをお勧めします。思考や対応のプロセス(how)ではなく、「何」が課題かを客観視できると、対応の検討がしやすくなり、部下の成長につながるからです。また、
- どんな情報があれば、今後レポートを書く上で助けになりますか?
- 私(上司)に改善してほしいことがありますか?
などの質問をして、部下の望んでいること、必要なことを知る機会にします(双方向の対話)。
さらに詳しく学びたい方は、ロッシェル・カップの新刊「DX時代の部下マネジメント」の第四章をご覧になってください。
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