9. コミュニケーションスタイルについて 【コラム:異文化の海を泳ぐ】

皆さんは以下のような言い回しをお聞きになったことはありませんか? いわく「阿吽の呼吸」、「一を聞いて十をしる」、「行間を読む」等々。

これらの言い回し自体が実際に使われることは段々少なくなっているかもしれませんが、日常生活の中や仕事の中での行動や言動で見受けられることは多々あると思います。そして日本の中では自然に行われているこの様なパターンが、ここアメリカでは通じないことが結構あるのに気づかされるのではないでしょうか?

そこで、今回はこれらの言い回しを紐解くことで日米の習慣の違いを見ていきたいと思います。辞書をひくと、これらの言い回しは以下のようになります。

・「阿吽の呼吸」とは「言わなくても分かり合えること」「言葉にしなくても通じ合うこと」を指します。 例えば家族で言えば、「メガネがないと思ってキョロキョロとすれば、さっと家族がメガネを渡してくれる」などがその一例でしょう。

・「一を聞いて十を知る」《「論語」公冶長から》とは「物事の一部を聞いただけで全部を理解できる」、「賢明で察しのいいこと」、「一を以て万 (ばん) を知る」のたとえ。

・「行間を読む」とは、文章には書かれていないが筆者が本当に伝えたい「隠された意図や意味合いを読み取る」ことを意味する言葉です。

これらを仕事での行動に当てはめてみると、日本では上司からの指示はそれほど詳細な内容にはなっていないのに部下はあまり質問もせずそれなりの対応をしています。一方、この国でローカル従業員にこのような指示や依頼をすると多くの場合うまくいきません。何故そうするのか?どうしてこれをやらなければいけないの? どうしてこの期限なの?(本社からの指示だと大抵至急。)
何でこんなことが起きるんだろう、気が利かないやつだらけだなと思わず愚痴がでたり、イライラが高じてフラストレーションが溜まる結果になったりしませんか? これが日米文化の違いなんだよと簡単にいいたいところですが、本当にそうなのでしょうか? ここアメリカでもこの様な行動は存在していると思います。

スポーツを例とれば「サッカーで一人の選手がボールを持ってそのままゴールを狙おうとした時に、他の誰かがゴール前へと走って相手選手を引きつけたり、ボールを持った選手が相手選手に囲まれた際にすぐにパスが出せるような位置に他の選手がいく」などは「阿吽の呼吸」の一例です。又、この国でも母親が多くの言葉を発しなくとも子供はちゃんと母親の意図を理解することができる様です。これも「一を聞いて十をしる」の一例でしょう。

皆様の職場を考えてみてください。勤続年数が長いローカル従業員の方と最近入社した方とでは反応が違うと思われませんか? 例えば"これは難しいかもしれない"と日本人が言うと大抵の日本人はこれを"NO"と言っていると考えます。しかしローカルの人たちの反応は色々です。日系企業や日本人との付き合いが長い人は我々と同じ様な反応をする傾向があります。

何故日本の企業ではこんなことが通じるのでしょうか? 既に皆様お判りのことと思いますが、これは単に日本の文化や習慣だけから来ているのではなく、終身雇用制にもその一因があると私は考えます。入社したらずっと同じ会社で働くケースがほとんどで、永年同じ釜の飯を食ってきた同士だからお互い何を考えているのか一々細かく説明しなくとも分かりあえるようになるのです。ここに「阿吽の呼吸」、「一を聞いて十をしる」、「行間を読む」と言ったいわば神業のような事が可能になるのだと思っています。非言語的コミュニケーションをとる日本式を、直接的な言語コミュニケーションを好むこの国で期待するのは中々難しいでしょうね。

皆様はどうお感じになりますか? 感想を聞かせていただけましたら幸いです。では、この辺で。

* この記事はデトロイト日本商工会の会報「Views」に2020年11月に掲載されたものです。

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