米国の雇用機会均等委員会(EEOC)によると、人材採用プロセスで何らかの自動化ツールを使用している雇用主の割合が今や83%に上っています。この種のツールが広く使われているのには、それなりの理由があります。採用担当者の仕事を様々な点で簡単にしてくれるからです。

AIプログラムは、オンラインの経歴書やソーシャルメディアのプロフィールを分析して、職種ごとにベストの候補者を見つけ出すことができます。有望な候補者にパーソナライズしたメッセージを送信することもでき、手作業ではおよそ不可能な人数に個別に連絡できます。

こうして採用プロセスが始まった後は、採用ファネルを通じてすばやく効率的に候補者を導いていくことで、候補者にとって気持ちの良い体験になるようサポートします。候補者の質問に答えたり、面接の日時を設定したりする際には、チャットボットがリアルタイムで対応できるでしょう。

AIは審査の過程でも活躍し、ジョブ・シミュレーションやオンラインのテストを使ったスキルの評価に役立ちます。ビデオ面接の際に顔の表情や話し方のパターンを評価するプログラムもあります。

これらのツールは魅力的に見えるかもしれませんが、差別につながる可能性も指摘されています。例えば、話し方のパターンを分析する自動化ツールは、発話障害のある人に低いスコアを付けるかもしれません。また、経歴書に無職の期間がある人を落とすように設定されたプログラムは、育児や病気で休業した有能な人材を弾いてしまうかもしれません。

EEOCは懸念を表明しています。2023年1月には公聴会を開いて、AIや他の自動化システムが雇用の決定にもたらし得るメリットとデメリットを考察しました。そして2023年5月には新しいガイダンスを発表して、AIツールのバイアスは差別禁止法令に抵触する可能性があり、それを使用する雇用主は説明責任を問われ得るとしました。

ニューヨーク市はさらに踏み込んで、2023年7月5日、おそらく世界初と思われる条例を施行しました。機械学習と人工知能に依存して候補者選びを支援する採用ソフトウェア(自動雇用決定ツール(AEDT)と呼ばれています)は、サードパーティー会社による監査に合格し、人種差別と性差別のバイアスがないことを証明しなければならないという条例です。この種のソフトウェアを販売する会社は、監査結果を公開しなければならず、監査を受けていないソフトウェアを使用する会社は、条例違反となります。違反した場合の処罰は、1日につき最大1,500ドルの罰金です。

ニューヨーク市のこの条例は画期的ですが、なおも限定的だと専門家らは指摘しています。年齢や障害のバイアスに基づく差別には対応していません。また、実質的な決定を下すプログラムに特化しているため、採用プロセスの初期段階で応募者を絞り込むためによく使われている人気のツールは対象外となるかもしれません。

それ以来、他の管轄区域でも規制強化に向けた措置が講じられてきました。イリノイ州、カリフォルニア州、メリーランド州では、採用においてAIやビデオ分析ツールを使用する際に透明性と同意を求める法律を制定または拡大しました。連邦レベルでは、EEOC(雇用機会均等委員会)が2024年末に最新の技術ガイダンスを発表し、雇用主はタイトル7やアメリカ障害者法などの既存の差別禁止法に基づき、アルゴリズムによるバイアスを積極的に評価し、軽減しなければならないことを明確にしました。ホワイトハウスも2023年末に、AIの安全で信頼できる開発と利用に関する大統領令を発令しました。この大統領令には、自動化システムが公民権に与える影響を政府機関が評価することを義務付ける内容が含まれています。

AIツールが普及し複雑化するにつれ、米国全土の規制当局は、採用におけるイノベーションが公平性を犠牲にすることのないよう取り組みを強化しています。

* This article originally appeared in Teikoku News.

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