teambuilding in different cultures Japan

私が「異文化間の理解」についてのワークショップを行っているとき、出席者の一人である日本人派遣社員(日系企業の欧州子会社に勤務)がこう質問した。「チームビルディングって実際何をすることですか」。どの事業活動もそうであるように、チームビルディングにも強い文化的特質がある。そこで、この日本人社員の質問をきっかけに活発な討議が交わされた。

チームビルディングは次のような要素に左右される。(1) グループ内の人々がどのような意思伝達方法を望んでいるか。(2) いかにして上司に使われ、部下を使いたいのか。(3) やる気を起こすための場はどこか。そして最も重要なのは (4) チームの一員となることが各自にどのような意味をもつのか。これらはどれも文化の影響を強く受けやすい。日本には本来、「チームビルディング」という言葉は存在しない。しかし、この言葉がどの文化にも共通の意味をもつと決めつけるのは誤りである。

日系企業は元来、意識せずにチームビルディングを奨励してきた。それには、花見、忘年会、社内旅行などのイベントがあるが、ほとんどは日常の活動の一部となっている。例えば、定期的に行われる朝礼とか、昼食、帰りに立ち寄る居酒屋、あるいは喫煙室で行われたりする。

私が欧州人社員として日本で働いていた頃は、チームビルディングのイベントにはめったに参加しなかったが、チームの一員であるといつも自然に感じていた。ところが、私が欧州に戻ると、チームの面々からチームビルディング活動を余分にやってくれと頼まれた。なぜそんなことを頼んでくるのか、私は理解に苦しんだ。チーム全員、互いにきめ細かく連絡を取り合い、ときには交流も怠らなかったからだ。だから私も、この日本人社員の質問のように、「それ以外に何をするのか」といぶかしく思った。

日系企業も欧米企業もチームビルディングが重要である点では意見が一致しているが、それにどう取り組むかという点では明らかに意見が分かれる。それはなぜなのか?日本では、チームは日本人という同一の文化をもつ面々で構成され(日本人以外の人はほどんと皆無)、どの人も同じ企業文化のもとで長く働き(同じ会社に長期間勤務)、その多くは転勤を経て様々な業務分野で経験を積んだジェネラリストたちだ。その意味で、日本のチームは押しなべて同質性が高いといえるだろう。それとは対照的に、欧州では、チームは多様な文化的背景をもつ人々で構成され、各々が専門知識をもつスペシャリストとして自覚し、キャリア歴をもち、多数の女性が管理職に就いている。そのため、欧州のチームは概して異質性が極めて高いといえる。

同質性の高いチームにとって、チームビルディング活動とは「おまけ」のようなもので、交流と関係強化の場に過ぎない。一方、異質性の高いチームにとって、チームビルディング活動とは、相互理解を深め、相違点に取り組み、それを建設的に利用する方策を見極める場を作り出すことなのだ。チームのメンバーに共通点がほとんどない場合(性別、文化、民族、年齢の差)、チームビルディングのイベントを催すことは、信頼感を培い、対立を避け、意気込みを増し、終局的に良い実績を上げるうえで不可欠となる。欧州のスタッフは、交流の場が与えられれば感謝するが、それ以上に、個人として、チームとして、どのように作業を進めるべきかを検討する機会とみてチームビルディングに期待をかける。これには一般に、チーム力学、文化の相違、性格タイプを、例えば、タイプ別性格診断(Myers-Briggs type indicator: MBTI)などを用いて検討することが含まれる。

関連記事