日本語にはleadershipに当たる言葉がありません。カタカナで「リーダーシップ」と表記しますが、これはその他のカタカナ言葉と同様、西洋諸言語から借用した外来語です。日本においてとは、いったい何を意味するのでしょうか?また、グローバルに活動する日系企業にとって、リーダーシップとは何なのでしょうか?
初期の西洋のリーダーシップ理論は、特定の行動及び性格傾向が効果的なリーダーシップと関連していると提言しました。その考えに基づき、リーダーとなる素質を持ち合わせている人材を採用し育成するために、多くの企業はリーダーシップ能力の枠組みを開発することに力を注ぎました。
日本では、優れたリーダーシップとは多くの場合、企業理念を体現する能力と現場の仕事を深く把握する能力だと考えられています(現地現物)。この従来の日本的リーダーシップ・スタイルは、80年代に日系企業が海外進出を果たして成功を収めたことをきっかけに、世界にも知れ渡るようになりました。
最近のリーダーシップの研究は、「グローバル・リーダーの開発」及び「国際的リーダーシップ能力」に焦点を当てています。面白いことに、この研究は新たなリーダーシップの枠組みを作る代わりに、リーダーシップを実践するためのフレキシブルな方法を生み出しました。つまり、すべての状況において効果を発揮するような決まったリーダーシップ・スタイルは存在しない、というのが、現在の一般的な見解です。
ここ数年間で、欧州を拠点とする企業の日本人ディレクターで、私から見た「優れたリーダー」に当てはまる人物に何名か出会いました。そのうち一人は、子会社を再編することによって、初めて黒字を出すことに成功した人物でした。彼は、繰り返しのリストラにもかかわらず、自分のマネジメントチームや従業員から厚い信頼を獲得しました。彼は会社に一番乗りで出勤し、毎朝8時に正門の前で喫煙休憩を取りながら、出勤してくる従業員皆に挨拶をすることで知られていました。そして彼は、典型的な日本的リーダーシップ・スタイルの特徴をいくつも備えていました。例えば、社員のロールモデルになることを一生懸命に目指し、現場で起こっていることに細心の注意を払っていました。欧州チームのスタッフたちは、そんな彼の行動に時々戸惑いを隠せない様子でしたが、心の底から彼に対して尊敬と感謝の念を持っていました。
その他にも、同じように欧州のチームから信頼と尊敬を獲得することに成功した日本人社長や経営管理者を何人か見たことがあります。彼らに共通することはいったい何だろうと考えてみたところ、次のような結論に至りました。彼らは、自分の会社のその国の代表者や取締役人事部長など、自分のディレクターに当たる人物少なくとも一人と、非常に良好かつパワフルな関係を持っていたのです。そのような強い人間関係を持っていると、共鳴版やコーチのような存在として、組織全体に影響力を発揮することが出来ます。また、同僚は自信を与えてくれ、現地チームを率いるための正しい態度を教えてくれるようです。一方、上手く機能していない組織では、日本人ディレクターは欧州人の同僚と近い関係を持っておらず、気軽に話せる現地のスタッフがいない傾向があります。
最も優れた「グローバル・リーダー」とは、新しいチームや地域に移動するたびに、そのチームや現地に合ったリーダーシップ・スタイルを学ぶ努力をするような人物です。そして、効果的なリーダーシップの鍵となるのは、建設的なフィードバックを与えてくれ、新しい職場環境に適したスタイルを身に付けるのを助けてくれるような同僚及びコーチやメンターと、強い人間関係を築くということだと思います。
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