13. アメリカにもある日本の風習 【コラム:異文化の海を泳ぐ】

これまで主に日米文化、習慣の違いやそれらが何に起因しておきるのだろうという点について触れてきましたが、最近ふと、これは日本独特の風習だと思ってきた事が実はこの国でも起きているのだなと思う事が多々ある事に気づきました。今回はこのような事例について述べてみたいと思います。

最初は「根回し」についてです。この言葉は皆様にとっては身近に感じるのではないかと思います。何故なら言葉として使わなくとも日常当たり前のように行っている行動だからです。これは元々樹木の植え替え後の活着を容易にする為,1~2年前に行なう細根の発生を促す処置をさす園芸用語でしたが、事前に工作するという意味合いから転用され、会議や交渉を円滑又有利に運ぶため、非公式の場で合意の形成をはかる事として定着した言葉です。元来、国政や国家間で争点が浮上する前後や、会議や交渉の決裂後によく行なわれ、話し合いによる依頼、説得、妥協といった手法を用いるのが通常でしたが、民間でもそれが引き継がれてきたように思います。

ではこの根回しは日本だけかと言うと、ここアメリカでも立派に存在します。議会での法律審議の際、議員に対するロビー活動 や、事前の個別調整、テーブル下での説得等はまさに根回しと言ってもおかしくはないですね。又、他国間との合意の前に実務方による事前交渉や駆け引きつまり「根回し」が頻繁に行われているのは良くご存じの事と思います。民間企業内では日本ほど使われてはいませんが、トップマネージメント間での駆け引きには多かれ少なかれ行われてはいるでしょう。

次は「本音と建て前」についてです。辞書等で見ると、本音とは真実の感情・欲求を指す。これらは社会・立場から期待・要求されることと違う場合があり、しばしば正直に表現されない。一方、建前とは公に表す行動・意見を指す。これらは社会・立場から期待・要求されることで、本音と一致しない場合がある、とあります。よく日本人は建て前が多く、中々本音を言わないので誤解をされやすいといわれますが本当にそうでしょうか? 

確かにこの国では我々は会議や、議論の場であまり意見を言わない(というか、言葉の壁で言えない)傾向は否めません。又自分の立場上、本音を言えないケースもままあるのではないでしょうか? 一方ここ米国では皆本音を言うといわれていますが、そんな事もないと思います。特に政治的な立場でものをいう時には中々本音を言わないものです。うっかり本音を言うと成るべきものも成らなくなってしまう事もあるので本音は隠して建て前を表に出しておく、物事が期待通りになった時に初めて本音が見えてくるものです。

最も、この国のある政治家には本音とおぼしき内容を公言してはばからないといった人もいます。たとえそれがあちこちから猛烈な反発があってもあまり気にしないようでむしろこれらの反応を見るためにあえてぶち上げているという見方もあるのではと思っています。あんまりばかげた意見を公言するのもどうかと思いますが。

以上、私見を交えて書かせていただきました。皆様からの率直なご意見をお待ちしております。

今回はこの辺で筆をおく事に致します。それでは次回お目にかかりましょう。

* この記事はデトロイト日本商工会の会報「Views」に2022年3月に掲載されたものです。

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