さて、今回は異文化体験を私の私生活での事柄を交えてお話したいと思います。私の妻は米国生まれで米国育ちのアメリカ人です。彼女と出会ったのがここミシガン州で、結婚もこちらでしたから彼女は日本語がまったくと言っていいほどわかりません。従って日常会話は全て英語になります。私は通算で22年ほどこの国で暮していますが未だに英語力は十分ではありません。家庭内での会話は英語と書きましたが、通常のアメリカ人同士の会話とはかなり違っています。いわゆるネイティブ英語とブロークン英語(ネイティブではないという意味)での会話です。ではどこがそんなに違うのでしょうか?

彼女は私と出会う前すでに日本に興味を持っていたそうです。10数年前に私の母に彼女を紹介するため、はじめて日本に連れて行って以来、大の日本好きになり以降毎年のように日本を訪れています。これはこれで私にとっては大変ありがたいことですが、一方で困ることもあります。それは「通訳」。私の姉や親類の人々との間で飛び交っている日本語での話題を彼女に伝えることの難しさ。或いは私の昔の友人仲間との飲み会での会話。皆様の中にはそうそうと思い当たる方もおられるかと思います。彼女に関する質問や話題が出ている時は比較的容易に通訳が出来ます。なぜかというと、私は会話に加わっていないので内容を理解し通訳する事に私の頭脳を集中できるからです。しかし、自分がその会話に加わっているとそうはいきません。私の頭脳は会話の中身に集中していますし、会話をしている人は大抵複数です。これらの会話の全てが私との間でというわけではなく他の人同士の会話を聞いていて相槌をうったり、笑ったりするケースがままあります。これを横で聞いている妻は会話の内容にまったく付いていけませんから私に今何を話していたのかとちょくちょく聞いてきます。これは私にとっては大変難しい通訳です。彼女はこれらの会話を全て知りたいのですが(当然ですね)私はそれらの会話を全て覚えていないので通訳は当然短くなります。すると彼女が言います。貴方たちはもっと多くの会話をしていたのに何で英語の説明はそんなに短いの? この疑問は通訳を介した会話で多くのアメリカ人から出てくるものの一つです。

余談になりますが、アメリカ映画で日本を舞台にしたLost in Translationというのがありましたが、この中で主演のBill Murryがウィスキーの宣伝を撮っていた際日本人ディレクターが英語になりにくい単語を並べた指示を延々と出し、それを通訳の女性が英語に直した時彼が発した疑問とまったく同じでした。又、二人で日本のドラマや旅番組をテレビで見ているときにも起こります。ホストがあちこちを訪れて地元の人たちと交流をするスタイルですが、この会話が往々にしてきちんとした日本語になっておらず、主語や目的語をはしょることはしょっちゅう、果ては地方のなまりが入ったりしてきて集中して聞いていても良く理解出来ない事が多々あります。其の上自分自身が番組を楽しんで見ていますから、こんな時彼女から今何を彼らは話しているのと突然聞かれた時には本当に困ります。他人同士の会話ってその流れから大体理解できますがそんなに長く覚えておらず直ぐに忘れてしまいます。さていざ通訳の段になると、さて何を彼らは話していたんだろう、ということになります。

皆様方も職場で英語の出来る人に通訳をしてもらうケースもあるかと思いますが、その際是非配慮して頂きたい点をいくつか上げておきます。1.通訳をしている人に議事録を押し付けない。2.論議に参加している人には出来るだけ通訳を頼まない。上記で述べた私の私生活上での体験と照らし合わせていただくとその理由が良く理解していただけると思いますが如何でしょうか。是非参考にしてください。では今回はこの辺で筆をおくことにいたします。

* この記事はデトロイト日本商工会の会報「Views」に2019年7月に掲載されたものです。

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Hiroshi Iwasaki
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