7. 反省について 【コラム:異文化の海を泳ぐ】

今回は「反省」と言う言葉を中心とした話題です。この言葉は日本の社会では頻繁に聞きますし、企業の中でも良く使われます。現状把握、その反省点と今後の対応、と言った具合に。 

反省を辞書で引くと 1 自分のしてきた言動をかえりみて、その可否を改めて考えること。 2 自分のよくなかった点を認めて、改めようと考えること。となります。
しかし、実際日本の巷で使われている意味は2.のほうが圧倒的で非を認め悔い改めるという風に理解されている気がします。私自身、この言葉を聞くと記者会見で頭を下げて謝罪会見をしている大企業のお偉いさんの姿が目に浮かびます。そういえば昔「反省だけなら猿でもできる」という言葉が流行ったことがありましたね。どうも日本人は頭を下げたり、謝罪の言葉を聞くと何故か気分がよくなる傾向にあるように感じます。逆に謝罪の言葉がないとあいつはけしからん、誤ることもできんのかと怒りがわいてきます。これは日本人に共通した感情ではないでしょうか? 皆さんはどうですか? 仕事のなかで良くアメリカ人は反省しない、過去を振り返りたがらないといった不満を聞きます。私自身の経験でも多々ありました。

例えば、製品に不具合が出てその対策を考えるとき、我々日本人は過去を振り返りどこに問題があったのかを探し、(反省し)それをなくすにはどうすればよいかを考えて対策を取りますが、これをアメリカ人たちを交えて行うとかなり抵抗をされる時があります。これはどうしてなのでしょうか?一般的にこの国で育った人たちは過去をあまり振り返らない傾向があります。過去を振り返り、反省してどうするの?時間の無駄でしょ、それより将来の事を考えましょうと。そこには大きく2つのカルチャーの違いが寄与しているように思います。一つは、謝りの文化とめったに謝らない文化の違い。日本ではとりあえず謝る、頭を下げるというのが問題が起きた時にとる最初の行動で、これにより他の人々の印象がよくなります。

一方、この国の文化では謝罪の言葉や態度はめったに聞かれません。なぜならこれにより自分に不利な方向に進んでしまう危険があるからです。この国の雇用環境は日本と違い従業員を解雇することは比較的簡単で、自分のとった行動がもとで問題が起きたとなればそれを理由に首になるかもとの不安があるからです。いやいや、日系企業ではそのようなことはしないよと皆様は思っていても多くの従業員は過去に他の職場で経験したり、見聞きしていますのでこの不安は心の奥深くにいつも潜んでいると思います。ですからこういったケースではまず彼らに過去を振り返るのは決して責任者と追及するのではないので安心して話してほしいといったことを説明し、納得してもらうことが非常に大切だと思います。もう一つは、結果重視の米国型と結果と共に過程をも重視する日本型との違いです。こちらの人から見れば理解しずらいことかもしれません。

日本語の「反省」という言葉を英語に置き換えると「Reflection」という言葉が多く使われています。しかしながら、この二つの言葉には少しニュアンスの違いがあるように感じます。「reflection」とは、個人が日々の業務や現場からいったん離れて自分の積んだ経験を「振り返る」こととなっており、反省の1.の意味に相通じているようですが、この言葉に過去の経験を振り返り今後に生かしていくと言う未来志向型のアプローチを表していると見られ、米国では受け入れやすい言葉だと思います。アメリカ人に対しては反省ではなくreflectionをしようといえば案外理解をしてくれるかも知れません。

では、この辺で。

* この記事はデトロイト日本商工会の会報「Views」に2020年3月に掲載されたものです。

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