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リーダーシップの顔 その2

日本人だから、大丈夫?

前回のコラムで、結果を出すためのリーダーシップの一例として、ミーティングの回数を減らすこと、またはその時間短縮をあげました。けれども、

「そうは言っても、今までやってきたことをそう簡単には変えられない。」

 とおっしゃる方も多いことでしょう。それが企業内の常識または文化の一部になっていて、誰もが不満に感じているけれども仕方のない「必要悪」として受け入れられている、というのが現実かもしれません。けれども、今の現実を変えていかなければ、未来も変わらないのです。

成功している人をより大きな成功に導くことをテーマに書かれた What got you here won’t get you there の著者は、成功者が伸び悩む原因は行動面にあると言い、その上で、直せるのはスキルの問題や知的問題、人格の問題ではないとします。改善できるのは他者に対する行動で、多くの場合、それはリーダーシップに関わる行動だとします。著者はこれをtransactional flawsと読んでいますが、言い換えれば、コミュニケーションの問題です。二十の例が挙げられて、そのトップ5は次の通りです。

何としても勝ちたい。何にでも口を挟む。他者を批判し、自分の基準を押し付ける。無用な皮肉や痛烈な言葉をあびせる。「ダメ」「しかし」などを頻繁に使う。

この後に言い訳をする、過去にこだわる、謝らない、人の意見を聞かないなどが続き、最後は、自分の欠点を個性と主張してはばからない、です。

この本を数年前に読んだとき、日本のビジネスパーソンにはあまり関係がないな、と思いました。ところが、’11年の東日本大震災の後、自分の間違いを痛感しました。

福島の原発危機の状況をテレビで追いながら不思議でしかたなかったのは、ロボットが出てこないことでした。新聞や雑誌に載っていた人間に近い形のロボットが出てきて、調査に乗り出すに違いないと踏んでいたのです。人間では持ち上げられない鉄骨などを動かしつつ原発の奥に進み、画像を送ってくるに違いない。ところが、待てど暮らせどロボットの影も形も見えません。同じように感じたアメリカ人も多かったのでしょう、CNNで、同じ質問が日系米人で物理学者のミチオ・カク(加来道夫)氏に投げかけられました。彼の答えは単純明快でした。

「日本のロボットは子供だましで、危機管理に使えるようなものはありません」

事実、作業をしたのはアメリカで開発されたロボットでした。私は狐に抓まれたような気分でした。しばらくして読んだThe Nikkei Weeklyの記事によると、ある大学が原発事故の際に役立つロボットを開発しようとしたところ、国から、

「そういう状況はありえないから、そんなロボットは作らなくてよい」

と言われたというのです。予算はもちろん国から大学に降ろされるものですから、作らなくていいと言われれば、大学側は予算の取れる別のものを考えざるを得ません。それで、せっかくプロト・タイプまで作っていたロボットはとうとう日の目を見ることなく、ガラクタになってしまった、と言うのです。

思わず深いため息をつきました。しばらくして、苦しくなりました。あまりのショックで、息を吸うのを忘れたからでした。ここに欠けているのは、スキルでも、知性でも人格でもなく、リーダーシップ、また、お互いへの尊重です。違う立場や意見を尊重する態度がなければ、リーダーシップには墓場があるのみです。

日本人は表現が軟らかく、角が立つ発言をはばかるので、問題が行動として顕著に現れることは少ないのですが、ある程度の成功を収めたリーダーの「心の態度」は、アメリカ人のそれとそう変わらないのだ、と認識しました。

本題に戻りましょう。ミーティング時間短縮への一つの方策は、コンセンサスにこだわらないリーダーシップの受け入れです。また、リーダーシップを生かす環境作りの下地は、部門や年齢、役職などの違いをいったん横に置いて、相手の意見に真剣に耳を傾けること、つまり人間同士の尊重です。

次のミーティングで、リーダーシップをとってみましょう。または、リーダーシップをサポートしてみてください。イエス・マン(ウーマン)になれ、と言っている訳ではありません。なぜなら、何にでも賛成する態度は尊重から出たものではないからです。

推薦図書

What got you here won’t get you there by Marshall Goldsmith