コロナウイルス 再入国禁止措置が、外国企業や外国人材の日本への投資や滞在に関する長期計画に疑問を抱かせている

再入国禁止措置が、外国企業や外国人材の日本への投資や滞在に関する長期計画に疑問を抱かせている。

現在の移住政策は、外国人に自分が二流市民であるかのように強く思わせる。(以前の諸問題でそう感じる人は多かったが、更にそう感じるようになっているそうだ)

このポストは2020年7月17日のジャパンタイムズ記事の和訳です

自国を離れて、海外に住む誰もが恐れる電話がある:それが、家族の誰かが病気や怪我をして、なるべく早く帰国を望まれる電話である。

あなたは日本の永住権を持っている。 税金を払い、日本語も話し、日本人とも結婚している。 それにもかかわらず、一度出国すると、再入国が許されない危険にさらされる。

現在のパンデミックによって、この国に住む多くの外国人居住者が置かれているのがそうした状況である。世界中の政府が新型コロナウィルス感染症の蔓延を阻止するために旅行制限を課している。その状況はどこも同じであるが、G7諸国の中で日本だけが、自国民と外国人居住者で課されている制限内容が異なる特異性を持つ。日本人であれば、入国時にPCR検査を受け、その後2週間自己隔離することに同意する限り入国が許可がされている。

この政策方針のおかげで、国境が閉鎖されたときに、たまたま日本国外にいた外国人居住者の再入国を許さず、海外に立ち往生させている。彼らが日本に残している、彼ら自身の責任―家賃を始めとする請求書の支払い、仕事、家族―はこれまで通り継続しているにもかかわらずである。

先日、政府は再入国できる外国人の範囲を拡大するつもりだと述べた。ところが、誰がいつ日本への再入国が許されるのか、未だ明確にはなっていない。現在の状況の不確実性、およびその不確実性がいつまでも続いていることで、外国人がビジネスを行う場所としての日本のイメージが大きく損なわれてきており、外国人の起業家や高度なスキルを持つ労働者たちは、日本への長期的な投資の実行を思い直し始めている。

窮地に瀕する企業

国際社会のビジネスリーダーたちは、政府が国を守るために取った措置に対する感謝を強調し、ウイルスの制御における日本の相対的な成功の一部は、その努力によるものだと認めている。

同時に、日本は感染の防止と経済の維持のバランスを取ることを目指していることから、在日米国商工会議所のクリストファー・ラフルアー会長は、「ビジネスマンによる合理的なレベルの出張が重要な問題になる」と述べている。彼は、日本で営業している外国企業の多くは、グローバルなビジネス展開に依存する部分が高く、特定の専門知識を持つ人材が日本に入れないことは、業務の著しい妨げになると指摘している。

同様に、在日欧州ビジネス協会のエグゼクティブ・ディレクター兼最高執行責任者(COO)であるヴァレリー・モシェッティは、ここに拠点を置く外国人ビジネスパーソンは、契約の締結や取締役会に出席するために、日本を離れることができる必要があり、このような要件では彼らが実際にその場に行かれることが望ましいと指摘している。

出入国制限は相当な影響をもたらしている。 在日ドイツ商工会議所がメンバー間で実施した最近の調査によると、メンバーの78%が再入国禁止措置が、彼らの業務に著しく大きな負担になっていると回答している。さらに、影響の大きさを訴える79%の企業は、進行中のプロジェクトの完成や新規プロジェクトの着手への影響を訴え、業績が危険にさらされていると述べている。

このような混乱が続く場合、グローバルに事業を展開する企業が日本の子会社で雇用を維持することに影響を与える可能性があると、モシェッティ氏は語った。その結果、これは日本経済にも悪影響を及ぼす可能性がある。

ラフルアー氏は、再入国に当たって、外国人が日本人とは異なる扱いを受けているという事実は、企業にとって重要な懸念となっていることを強調した。

「基本的な公正、公平の観点からも、国籍に基づく差別があってはならない」と彼は主張する。「日本で長期にわたって生活し、働いている外国人の日本への出入国が、日本人の旅行での出入国よりも地域社会にリスクをもたらす明確な理由はありません」。

「これはかなり心をかき乱すものである。平等な取扱いにかかわる問題だ。」とモシェッティ氏は述べる。

才能ある外国人の戸惑い

入国禁止措置はまた、高度教育を受けた、高度熟練人材、ようするに日本政府が引き付けたいと望んでいる移住者のような人々を含む、日本に滞在する多くの長期居住者の間でも疑問を投げかけている。

フランス出身で、日本で7年間、留学プログラムのコーディネーターを務めるアメリ・ル・ブフ女史は、現在の状況は彼女と日本人の夫が日本での生活を考え直すきっかけとなったと語る。

「私が憤慨しているのは、税金の支払いなど、日本人とすべて同じ義務を果たしているのに、同じように国から保護されないことです」と彼女は述べている。「私の仲間の外国人居住者の扱われ方を見ても、私たちは常に「捨て駒」、二流市民で、日本が危機に遭遇した際には、いつでも見捨てられるのではと感じざるを得ません」。

2018年から日本に住み、東京で人事コンサルタントとして働くジョー・ヴァン・アルスタイネも同意見である。

「これまでのところ、日本から出国して、再入国しなければならない必要性が無かったので、直接的な影響を受けてはいないが、日本での居住を考え直し始めました」と彼は述べている。「私たちの多くは自ら選択して現在の所に住み、日本社会に積極的に貢献するために出来ることは何でもしています。しかし、現在の状況は、私たちがこれまでに払った努力にもかかわらず、基本的には短期滞在の観光客と同じように扱われていると感じます」。

多くの外国人居住者にとって、入国禁止によって生じる不確実性は、クレジットカードや住宅の取得の困難、警察の人種による差別的取締まり、同性パートナーシップの法的承認の欠如など、外国人居住者が差別を経験する他の問題と重なっている。この問題が最後の決め手となり、この先、日本が望むように才能のある外国人材を引き付けられるかどうかに影響を及ぼすと見ている人もいる。

コーラル・キャピタルのCEOで創設パートナーのジェームズ・ライニー氏は、「特にテクノロジー分野で、日本が大好きで、良い機会があれば、日本で働きたいと思っている人はいる」と語る。「日本にもっと外国人材を歓迎する体制があれば、多くの才能を惹きつける可能性はある」とはいえ、再入国禁止は外国人にとってある意味の警戒信号になっているそうだ。

ライニー氏はまた、香港がパンデミックとは別の危機に直面している中、同市を離れると予想される各社地域本部に対し、日本が誘致を図っているが、より競争力のある地域ハブが勝ち抜く可能性があると付け加えた。

「危機の時に外国人居住者が不当に扱われるようでは、交渉の難航化に繋がる決定的な要因になる」とライニー氏は語る。

日本政府が近年誘致しようとしているもう1つのグループは、新しい会社の設立を模索している外国人起業家だ。しかし、今回の再入国禁止措置により生じた不確実性の雰囲気は、そのような取り組みに対する重しとなっている。これまで複数の企業を起ち上げ、最近まで福岡に住んでいた起業家のオリー・ホン氏が語るには、「外国人起業家に提供される奨励金は、例えば、商業賃貸契約の補助金、ベンチャー投資家の紹介、ビザの迅速な発行などがあるが、入国管理局の気まぐれで会社経営が難しくなる事態があれば、それらの意味が無くなる」。

また、現在国内にいる外国人起業家は、自分たちの状況を考え直している。 匿名を条件に1人の米国人起業家が語るには、「日本での動きを見ていると、私や家族にとって、日本は長期的に住むところではないことを納得させられる。 結果として、日本での投資規模は変わる。今は、日本での従業員数の拡大をするかどうか、迷っている。国際的な本部を設立する他国の候補地も検討することになろう」。

予測可能性への欲求

日本政府は、外国人居住者が重病の親族を訪問したり、葬式に参加する必要がある場合など、人道上の理由があれば、再入国禁止措置の例外を認める。ただし、決定はケースバイケースで、確実性や信頼性は考慮されていない。

「政府のガイドラインでは、誰が日本への帰国が許可されるのかについて基準が明確でない」とラフルアー氏は語る。「これでは個人もそうですが、航空会社にとっても問題が大きすぎます。再入国が許可される外国人居住者なのかどうか、どうやって知るのでしょう?」

ライニー氏は、人道上の例外は日本政府が、「容易に撤回」する手段であり、結局は、「無回答」に等しいと思っている。同氏はまた、現在のアプローチでは「あいまいさが多く、お金、人生、ビジネスへの投資に関してはあいまいさを望まない」と付け加えて述べいる。

ラフルアー氏は、「道路運転規則のように公平で公正」であることの重要性と、「透明性と予測可能性を備えることが必須である」と強調している。

同志社大学の法律学教授でもあるジャパンタイムズ紙のコラムニスト、コリン・P・A・ジョーンズ氏は、再入国禁止措置が取られたことは、それほど驚くべきことでは無いと指摘している。

「裁判所は常に、外国人が一時的に出国し、自由に帰国する、「滞在する権利」を憲法で保護していないことを明確にしてきた」と彼は言う。「現在起きているのは、外国人居住者が常に抱えていた基本的な法律上の問題点が表面化したものに過ぎない。突然日本に入国(または再入国)できない可能性があるとしたら、日本への投資―時間、エネルギー、資本―はどのくらい安全と言えるのであろうか」。

新型コロナウィルス感染症の危機のおかげで、外国の企業や個人は改めてこの問題に取り組まざるを得なくなっているが、最終的に変更するかどうかを決定するのは日本政府次第だ。在日欧州ビジネス協会のモシェッティ氏は次のように述べている。「日本がこの先、危機を迎える度に閉鎖されると知ったら、来日して働こうという外国人はいるのであろうか?」