職場環境とコミュニケーション

ストレスの少ない職場作り

前回のブログでは、ストレスの少ない職場を作ることが、メンタルヘルス対策につながるということを書きました。職場のストレスについて話す前に、まず、ストレスとは何かについて考えて見ましょう。

皆さんにとってストレスとは何ですか?真っ先に何を思い浮かべましたか?
職場での人間関係?重要なプレゼンをする前のプレッシャー?子育てと仕事の両立?

ストレスというと、大抵はネガティブなことを思い浮かべるかもしれませんが、ストレスには、いいストレスも、悪いストレスも、どちらとも言えないストレスもあります。ストレス自体は、ニュートラルなのです。ストレスの定義とは、ある刺激に対する身体的あるいは心理的な反応です。

例えば、憧れていた人との初めてのデートの前日に、ドキドキする。これはもストレスです。「初めてのデート」というイベントに対し、心拍数が上がるなどの身体的反応、そしてワクワクするけど不安、などの複雑な心理的反応が起こります。これはどちらかというと、いいストレスですね。

反対に、悪いばかりのストレスもあります。例えば、会社の上司がいつも怒鳴り、自分の仕事に不満足な様子なので、会社に行きたくない。その場合、出社前に胃がキリキリ痛むなどの身体的反応や、憂鬱などの心理的反応が見られるかも知れません。

ここで強調したいのは、上記の例のように、「ストレス=悪」の方式は成り立たないということです。実際、ストレスとパフォーマンスにはベル字型の関係が見られ、適度なストレスはむしろ最適なパフォーマンスにつながるのです。ストレスがゼロだと、緊張感が無く、ケアレスミスが多くなります。反対に、ストレスのレベルが高すぎても、不安やプレッシャーから、思うようなパフォーマンスが出来ません。その真ん中あたりが、適切なのです。ですから、目標は、職場でのストレスをゼロにすることではありません。余分なストレスを軽減し、適度な最適なレベルのストレスを保つということです。

そのためには、具体的に以下のような対策が役に立ちます。

• 従業員の有給休暇の消化を奨励する
長すぎる労働時間と、休暇不足は、ストレスを増やすばかりでなく、仕事の効率を下げてしまいます。また、ワーク・ライフ・バランスが偏っていると、燃え尽き症候群になる可能性があります。仕事はマラソンのようなものです。長期的にダッシュし続けるわけにはいきません。従業員が有給休暇を取ることを奨励し、家庭やプライベートを犠牲にしてまで仕事をすることを求めないことが重要です。

• コミュニケーションの明確化
自分に期待されていることや自分の役割を明確に理解できれば、それだけ不安もなくなります。それらが曖昧だと、どうやって頑張ればいいのか分からないので、人はヘルプレスに感じるのです。継続的なヘルプレス感が欝につながることは、科学的に証明されています。ですから、部下を管理するときは、相手に求めているもの、任務の内容、フィードバックなどを、具体的に説明し、相手がそれを分かっていることを確認することが重要です。各個人に求められている役割が曖昧な職場は、ストレスがたまりやすいといえるでしょう。

• マイクロマネジメントしない
自分が自分の仕事をコントロールできないときも、ヘルプレス感につながります。自分のやり方でできない、自分のペースで働けない、自分の意見を聞いてもらえない、というのはフラストレーションにつながります。部下や同僚の行動や意思決定に過剰に干渉する上司は、マイクロマネジャーと呼ばれます。マイクロマネジャーは、部下の話を聴かない、時間の使い方まで指図する、自分の仕事のやり方を押し付ける、自分ですべて決めようとする、無意味な監視をして部下を束縛する、などの特徴を持っています。マイクロマネジャーがいる職場は、必然的にストレスが多くなります。

• 実力よりも少しだけ上の任務を与える
大きなプロジェクトのチーム責任者に任命されたりすれば、人はやりがいを感じ、頑張ろうとします。ここで重要なのは、その人の現在の実力よりも少しだけ高い実力を要する任務を与えるということです。少しだけ上なので、頑張れば手が届きます。もし、その人の実力よりも下の任務を与えれば、頑張る必要が無いので手を抜くかもしれません。また、成長する機会がありません。反対に、実力よりもかなり上の任務を与えれば、頑張ってもそれが実らないため、失意とやる気の消失を招きかねません。部下の成長段階を見極め、その実力に合わせた任務を与えることが重要です。

• 適度なプレッシャーを与える
適度なプレッシャーは、パフォーマンスの最適化につながります。例えば、「君はいつもいいプレゼンをするから、今回も期待しているよ」と言われれば、期待にこたえようと頑張ります。しかし、「このプロジェクトの成功は、全て君にかかっているんだからね」と言われれば、プレシャーがに押し倒されてしまうかもしれません。また、プレッシャーに弱い人も強い人も居ますし、どの程度のプレッシャーを「ちょうどいい」と感じるかは、人によっても違います。ですから、相手の性格や感じ方を理解したうえで、そのひとにとって「適度」であるプレッシャーを与えることが重要です。これには、共感力が必要になってきます。

• 快適な環境を整える
当たり前ですが、居心地のよいスペースというのは、ストレスを軽減するのに大切です。騒音がうるさい、社内の温度がいつも寒すぎる又は暑すぎる、照明が暗すぎる又は明るすぎる、整理されていない、悪臭がする、くつろぐスペースがまったくない。そのような職場環境では、そこに居るだけでストレスを感じてしまいます。

これらの点に注意すれば、職場環境を改善できるはずです。このテーマに関して、詳しいワークショップやコンサルティングをご希望の方は、お気軽にメールをください。