2011年6月23日 職場のメンタルヘルス対策
はじめまして。町澤です。
JICではシカゴを拠点に、ウェルネスや異文化適応などのセミナー、そしてコーチングなどを行っています。また臨床心理士・鑑定士として、大学院やクリニックで働いています。今日は、私の専門分野、「職場のメンタルヘルス対策」について紹介しますね。
労働省が2008年に中小企業を対象に行ったアンケートによると、抑うつ状態と見られる従業員の割合はおよそ25%にものぼりました。驚くべきことに、従業員の一割が“過去1年間に自殺を考えたことがある”と答えています。仕事や家庭、そして人間関係のストレス以外にも、異文化適応のストレスを抱えがちな駐在員の間では、この割合はさらに高いと予測されます。
人事・労務に関する課題解決のためのサイトを運営する株式会社アイ・キューが、cybozu.net株式会社と合同で去年行った「職場におけるメンタルヘルス」に関するアンケートの結果によると、企業のおよそ4割はメンタルヘルス対策を行っておらず、メンタルヘルス対策が行われている企業でも、従業員の6割以上はそれが活用されていないと感じていることがわかりました。
従業員へのメンタルヘルス対策は、企業経営のリスクの視点からも、非常に重要です。対策を怠ることで、“訴訟リスク”、“風評リスク”、“生産性の低下”、“健保財政の圧迫”などの重大な経営リスク会社の利益とリスクが高くなります(株式会社インターリスク総研の災害リスク情報参照)。
メンタルヘルス対策は、駐在員が居る会社では、特に大切です。なぜなら、異国で生活するというそれ自体が、ストレスになりかねないからです。例えば私は、クリニックのクライエントや現地の日本人仲間から、次のようなストレスをよく耳にします:
- 言語の壁
- 現地従業員との関係
- 駐在員コミュニティの中の人間関係
- 子供の教育(日本での受験対策など)
それではいったい、どのようなメンタルヘルス対策が効果的なのでしょうか?
私は、「予防」こそが、最も効果的な対策だと思います。インフルエンザの対策として予防接種をするのと同じことです。深刻な問題が起こる前に防ぐことが出来れば、それに越したことはありませんよね。また、予防は最も低予算な対策です。
「予防」として重要なのは、以下の4つです。
- 快適な職場環境づくり
- 駐在員の文化適応の支援
- 「潜在的うつ」の早期発見
- 管理職のメンタルヘルス研修
次回のブログでは、これら4つの「予防法」について、もっと詳しく解説したいと思います。
最 後に、日本ではまだ、心の病気に対する偏見が、根強いように見受けられます。アメリカでは、自分のカウンセリングの話をオープンに話す人が多いですが、そ のようなメンタルヘルスサービスを敬遠している日本人が多いようです。そのため、自分がう「うつ予備軍かも」と思っても、それを隠して一人で悩みを抱え込 んでしまう人が多いようです。十分なサポートがあれば、うつ病が発症する前に防ぐことが出来るかもしれないのに、これは非常に残念です。
私が強調したいのは、うつ病とは、決して「心が弱い人がなる病気」では無いということです。実際、一生の中でうつを発症する確率はおよそ20%、つまり、5人に1人が、うつ病を経験するということです。うつ病になるリスクは、誰もが持っています。もちろん、遺伝的に又は性格的にかかりやすい人も、そうじゃない人もいますが、環境的要因が非常に大きいのです。
つまり、心の悩みを持っている人と、そうではない人の境界は、実はとても曖昧なのです。ですから、もし、あなたの部下や社員、そしてあなた自身の心の健康を 望んでいるのであれば、心の病気に対する自分の中の「偏見」をまず捨ててください。それがまず重要な第一歩だと思います。
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それではまた。