1. 好きこそものの上手なれ【コラム:技あり!ことわざ】

「急がば回れ」「虻蜂取らず」「短気は損気」・・ことわざとは不思議な言葉である。はっとさせられたり、考えさせられたり、まさに「技あり!」とでも言うべきか、実に味わい深い。

なぜ、心に響くのか?おそらくそれは、時が経っても色あせぬ、何か普遍的なものが含まれているからであろう。実際ことわざとは、「生活の知恵や人生に役立つ教訓を含んだ言葉」とされている。では一体、どんな知恵や教訓が含まれているのだろうか?そしてそれらは、どう自分に当てはまるのだろうか?

この連載では、よく使われることわざのいくつかを取り上げ、そこに含まれる知恵や教訓について、自分なりの深掘りをしてみようと思う。読者の皆様からのご意見やご質問は、その助けにも励みにもなるので、頂けると大変ありがたい。一緒にことわざの世界を楽しんでいただければ、望外の喜びである。

初回となる今回は、「好きこそものの上手なれ」。「好きなことは、熱心に工夫しながら努力するので、自然に上手になるものだ。」という意味である。(小学館 例解学習ことわざ辞典)

好きなことは、誰に言われなくとも、自ら進んでやる。夢中になる。没頭する。たとえ壁にぶつかっても、その壁を乗り越えようと思える。いや、その過程自体が楽しいのだから、壁とさえ感じないかもしれない。確かにそんなに好きなことがあれば、自然に得意なことになっていくだろう。まずここまでは想像できる。

では実際に、好きなことが得意なことになり、それを生業にしている人はいるだろうか?多くはないが、確かにいる。職人さんや芸術家、個人事業主などがそうだ。私の父も、義父もそうだった。また生業とまではいかないが、好きなことが業務内容になっている人も多い。「財務諸表を見るとゾクゾクします。」と言っていた彼は、確かに経理部のエースだった。

日本の外はどうか?論語には、「之を知る者は之を好むに如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず。」という言葉がある。何事も、楽しんでやっている人には敵わない、ということであろう。英語圏にも、Do what you love, love what you do. という表現があるし、The only way to do great work is to love what you do. と言ったのは、かのSteve Jobsである。

こう見てくると、「好きこそものの上手なれ」ということわざは、何か人間の本質のようなものを、見事に言い当てていることが分かる。であれば、最も大切な問いは、こうなるのではないか?「自分が好きなことは、何だろう?」

この問い、単純なようでなかなか難しい。私自身、腹に落ちる答えを見つけるためには、少々時間が必要だった。皆さんはどうであろうか。もしかしたら、即座に自分の好きなことを言える方は、多くはないかもしれない。「好きなことはよく分からないが、嫌いなことならよく分かる。」「そもそも、そんなことを考える余裕がない。」しかし、好きなことが得意なことになるのであれば、それを見つけることは、極めて重要とは言えまいか。

では、どう見つければいいのだろう?私は、子供の頃夢中になっていた遊びに、そのヒントが隠されていると思う。周りの人に、自分の強み(得意)を聞いてみるのもいい。好きなことは、既に得意なことになっており、自分では気づいていない可能性があるからだ。嫌いなことを少しづつ止めてみるのも、個人的にはお勧めである。

好きなことは、皆違う。得意なことも、皆違う。ということは、自分が嫌いで苦手なことでも、それが好きで得意な人が、どこかにいるということだ。逆もしかり。であれば、自分の好きなことを追求すること自体が、立派な社会貢献とは言えないか。そして、「好きこそものの上手なれ」を実践する人が増えれば、得意なことを提供しあえる楽しい社会ができそうな気もするが、はてさて、さすがに妄想が過ぎるだろうか?

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