Japanese love charts and graphs

先日、アメリカで働いている日本人駐在員のためのセミナーをしたのですが、その時に次のような質問をしました。「一緒に働いているアメリカ人の最も改善の余地のあるの部分はどこだと思いますか?」これにはたくさんの回答が挙がりましたが、その一つは、「アメリカ人は情報のビジュアル化が不得意」というものでした。今回のブログでは、このテーマにフォーカスしたいと思います。

確かに、日本人と比べて、アメリカ人は情報のビジュアル化が比較的不得意です。一方日本人は、情報を視覚的に吸収することが多いので、ビジュアル化された情報に慣れています。これは私の仮説ですが、日本人が情報のビジュアル化が得意な理由の一つは、漢字という視覚的文字が日常的に使われているからではないでしょうか。アルファベットが一つの音価を表記する音素文字であるのに対し、漢字は基本的に、一つの意味(形態素)と一つの音節を表します。つまり、漢字はビジュアル化された情報の一例と言えるでしょう。漢字を読み書きできるようになるためには、視覚読解能力と視覚構成能力が要求されるので、必然的に絵を描くの上手くなります。そのため、日本人のほとんどはスケッチや似顔絵が、平均的なアメリカ人と比べてかなり上手なようです。アメリカでは、絵を描くのが趣味、または美術史を専攻でもしてない限り、こういった能力を磨く機会は余りありません。

私の仮説は、実は個人的体験に基づいています。およそ6、7年前、私はノースウェスタン大学が行っていたある学術的研究に被験者として参加することに同意し、かなり広範囲の認知能力を測る知能テストを受けました。後に試験者に自分のスコアを聞いたところ、視覚処理能力と視覚速度を測るテストにおける私のスコアが、ほかのアメリカ人の被験者に比べて群を抜いて高いとのことでした。何でだろうと自分でも考えてみたところ、頻繁に日本語の書物を読み、漢字を読むのに慣れていると言うことが思い浮かびました。実際、視覚処理能力のテストの内容は、漢字を読む作業に似ていたのです。ただし、日本語を読んでいるうちに、私の視覚処理能力が向上したのか、あるいは生まれつきこの能力に長けていたから、日本語の習得が早かったのかはわかりませんが。(私は子供のときからアートに夢中だったので、生まれつきビジュアルなタイプだったのかもしれません)もし日本人が、同じテストを受けたらどんな結果が出るのでしょう。漢字を読むのに慣れている日本人は、アメリカ人よりも高いスコアを取るでしょうか。気になるところです。

視覚的情報に重点が置かれている日本と比べ、アメリカの教育で強調されているのは言語です。そのため、アメリカ人は情報を視覚的よりも聴覚的に吸収することが多いと思います。このような日米の違いは、教科書やビジネス資料にも表れています。たとえば、日本の教材や資料では、 表や図が強調されていることが多いようです。

ビジュアル化された情報に慣れていないアメリカ人ですが、その能力を磨くことは可能です。先ほどのセミナーでは、「アメリカ人のビジュアル的能力をどうやって育てればよいか」との質問が出ましたが、私はそれに対し、自分の答えをこのブログに書くことを約束しました。

実は、情報をビジュアル化する能力を磨くことについて書かれた本は、すでにアメリカに存在していますので、reinvent the wheel (すでに存在しているものを独自に再開発すること)の必要はありません。そこで、いくつか本をお薦めしたいと思います。まずお薦めできるのは、TThe Back of the Napkin: Solving Problems and Selling Ideas with Picturesです。この本は、まさにぴったりなものだと思います。絵を使って情報をより効果的に伝えることがテーマになっています。絵が下手な人でも情報を効果的にビジュアル化することはできる、というポジティブな雰囲気で書かれているので、絵を描くことに苦手意識を持つアメリカ人にとっても非常に良い手引きだと思います。「マウスよりペンで書いた方がいい」という視点も、日本人の感覚に合うと思います。Beyond Words: A Guide to Drawing Out Ideasは、同じようなテーマを扱った本で、こちらもお薦めです。

グラフを描くスキルのためなら、Show Me the Numbers: Designing Tables and Graphs to Enlightenという本が役立つでしょう。より難解ですが、この分野ではThe Visual Display of Quantitative Information という本も傑作です。

日本の企業でよく使われている視覚的なものの一つに、A3型のレポートが挙げられます。興味深いことに、A3型レポートの書き方を説明する英語の本は複数存在します。たとえば、Understanding A3 ThinkingManaging to Learn: Using the A3 Management Process、そしてThe A3 Workbook: Unlock Your Problem-Solving Mindなどです。(この3冊ともトヨタ自動車の元社員によって書かれているのは、驚くべきことではありませんね)。また、ヘルスケア分野に絞ったA3の本までもあります。A3 Problem Solving for Healthcareというものです。

このような本の推薦リストが、アメリカ人同僚とのコミュニケーションの促進において、皆様の参考になればうれしいです。

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