
グーグルがまだ若い会社だった頃、採用面接で聞く風変わりな質問がシリコンバレーで話題になっていました。「シアトル市内のすべての窓を掃除するとしたら、いくら請求しますか」や「マンホールはなぜ四角ではなく丸なのだと思いますか」といった質問を聞いていたのです。こうした質問をすることで、即興でクリエイティブかつ論理的に思考する能力を量ろうとしたのです。
しかし、歳月を経てグーグルは、こうした質問では誰が良い社員になるかは予測できないことを悟りました。2013年に人事部の責任者は、頓智を量る質問が「まったくの時間の無駄」であったことを認めました。この結論に至った過程で使われたのが、グーグルが最も得意とするもの、すなわちデータ分析でした。
グーグルは、「ピープル・アナリティクス」という旗印の下に、会社の人事管理において有効なこととそうでないことに関するデータを収集し、その様々な側面を分析しました。これは注目に値します。人事とは、ふにゃふにゃしてつかみどころがなく、数量化が難しいものと思われがちだからです。しかし、グーグルは、人の問題に着目しました。グーグルのピープル・オペレーションズ部(人事部のことをグーグルはこう呼んでいます)の元責任者は、「勘から科学への移行」だと説明しました。
グーグルが分析した項目のひとつが、社内で手腕を発揮しているマネージャーの特性でした。マネージャーのパフォーマンス評価、年1回の社員調査からのフィードバック、それに社内の「グレート・マネージャー賞」の受賞候補者などを調べたのです。
その結果、優れたパフォーマンスを示しているマネージャーには共通の特性があることが分かりました。1)良いコーチであること、2)チームに権限を委譲し、マイクロマネジメントをしないこと、3)チームメンバーの仕事ぶりや満足感に対して興味を示し、気にかけていることを表現すること、4)生産性が高く、結果志向であること、5)コミュニケーションがうまいこと、6)チームメンバーのキャリア開発をサポートすること、7)明確なビジョンと戦略を持っていること、8)チームにアドバイスするうえで重要な技術的スキルを持っていることです。そしてグーグルは、この8つの要因に基づくトレーニングとコーチングのプログラムを策定しました。
さらに、グーグルは、チームワークについての社内調査も実施しました。200人の社員に聞き取り調査をして、180以上のチームの特性250項目以上を調べたのです。この結果、誰がチームのメンバーであるかよりも、むしろチームのメンバー同士がどのようにインタラクションしているかのほうが重要であることが明らかになりました。グーグルで力を発揮するチームには、5つの特性がありました。1)精神的に安心できること、2)頼りになること、3)明確な構造があること、4)仕事に意義があること、5)影響力の大きな仕事をしていることです。これらを基に、グーグルは、チーム特性の診断ツールとこれらの特性を向上させるためのツールを開発しました。
データを分析したうえで、それを改善のために活用するという組み合わせは、まさにシリコンバレー流マネジメントの真骨頂です。
* This article originally appeared in Teikoku News.
関連記事
IT系の人材確保:シリコンバレーから学べること
IT系の人材を確保するのは、米国のどこであれ難しいものですが...
3. 沈黙について 【コラム:異文化の海を泳ぐ】
さて、今回のテーマが何故異文化に関係があるのだと首をかしげる...
13. 叱らずにやる気にさせる 【コラム:幸せになろうよ – a joyful life】
第10回と11回で「叱る」をテーマに書きましたが、「叱る」以...