さて今回は「異文化でのコミュニケーション術」について触れたいと思います。異文化でのコミュニケーションと言うとすぐ言葉の壁が頭に浮かびます。確かに多くの日本人はネイティブ英語についていけず苦労されていると思います。語学力向上は勿論大事ですが、コミュニケーションは言葉だけでしょうか。私は語学教育の専門家ではありませんし自分自身が苦労している側ですから、別の観点からこの問題への対処を見てみたいと思います。自身の体験を含め見聞きしたいくつかの例を紹介します。

1.アメリカに来てまもなく、とあるレストランでオーダーの段になり、これまでに大分英語に馴染んできたとの自負もありふと少しかっこいい言い回し(学校で習った英文法を思い出し)をウエイトレスにしてみました。すると途端に彼女の喋り方が早くなり、我々(私とその友人)はまったく理解ができず頭を抱えました。実は彼女の喋り方は早くなったのではなく、それまで我々を英語があまり出来ないと見てゆっくり喋っていたのが普通の速度に戻っただけ。彼女は私の言葉を聞いてこの人は英語が普通に話せる人だな、では特に気をつける必要がないなと考えた。これが後で我々が出した結論でした。なまじ格好良い言い回しはしないほうがいい。

2.ある会社のオフィスを訪問した時、そこの支店長が米人と英語の会話をしているのを聞きました。彼の英語は私から見てもお世辞にもうまい英語ではなく、時々日本語の単語が混じっている何とも奇妙な英語でした。でもこの方は気にする風もなく堂々とかつ明瞭にしべっていましたし、聞いている側もちゃんと理解をした様でした。コミュニケーションって単にきちんとした英語を話す事だけではないんだな、と感じいりました。

3.あるクライアントを訪問した時に聞いた話。複数の日本人出向者が仲間の一人について不思議そうに話していました。彼は特に英語が喋れるわけではなく、見てくれもむしろとっつきにくい印象であるのにローカルメンバーの評判が良く日常のコミュニケーションもうまく行っているようなんだがと。又ローカルの人たちと話しても彼とのコミュニケーションは全然問題ないと話していました。

以上をお読みになって皆様はどう感じられますか? そう、コミュニケーションは言語だけではないのです。私もそうですが、多くの日本人はきちんと文法にのっとった英語を喋りたい、間違った言い方をしたら恥ずかしい、といった考えが脳裏をよぎり中々口をついて言葉が出ない傾向があります。自信が持てないので話し方も低い声でぼそぼそと言うので更に相手も理解できにくくなります。こうなると学校で教わった英語の知識がかえって邪魔になっているな、と思います。思い切って一度文法など忘れてみませんか? こんな事を言うと語学教育を否定しているように聞こえますがそういう事ではなく、一度学校で学んだ知識を頭の引き出しの奥にしまい、段々慣れてきたらこれらを引き出すようにしたらどうかという事です。意識しなくても勝手に出てきますよ。出てきたら使ってみましょう。すると、お、通じたなと感じます。これは自信に繋がります。自信が持てればおのずと言葉もはっきりとしてきます。先に述べたお二人はきっと学校時代、英語の授業にはあまり身が入っていなかったので文法など気にもせず、気迫でコミュニケーションをしていたのではと思います。

昔、こんなジョークを聞きました。世界で一番使われている言語は何ですか? 英語? スペイン語? 違います、ブロークンイングリッシュです、というジョーク。皆様もこの世界で一番使われている言語を駆使して良いコミュニケーション作りを目指して下さい。日本人はとかく自分の事情をはっきり言わない傾向がありますが、遠慮は要りません。我々はどう頑張ってもネイティブスピーカーにはなれないのですからむしろ相手にそれを知ってもらう事もコミュニケーション術に一つかも知れません。

では今回はこの辺で。

* この記事はデトロイト日本商工会の会報「Views」に2018年7月に掲載されたものです。。

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Hiroshi Iwasaki
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