4. 果報は寝て待て【コラム:技あり!ことわざ】

あなたに何か実現したいことがあるとする。その実現に向けて、自分なりにできることはやっている(つもりだ)。でもまだ実現はしていない。そんな時、「焦らず気長に待とうよ。果報は寝て待てだよ。」と誰かに言われたら、あなたはどう思うだろうか?

「果報は寝て待て」とは、「良い結果は、焦らずに待っていれば、いつか自然にやってくる。」という意味である。果報とは、過去の行いに対して受ける現在の結果のこと。元々は、良い結果も悪い結果も含まれていたのだが、次第に良い結果だけを指すようになったようである。また「寝る」とは、単なる睡眠ではなく、「心穏やかに過ごすこと」を比喩している。要は、やるべきことをやった後は、あまりジタバタせず、執着を手放して、自然の成り行きに任せなさい、ということだ。

こう改めて意味を確認し、背景を調べてみると、先人の慧眼と逞しい楽観主義に、思わず「うーむ」と唸ってしまう。特にはっとさせられるのは、「焦らずに待つ」という点だ。待つということは、時としてなかなか難しい。結果が出ないと、どうしても焦ってしまう。これは万国共通なのであろう、焦りを戒め、待つことの大切さを説くことわざは、他の文化圏にもある。

例えば英語圏には、Good things come to those who wait.(良いことは、待つ者のもとへやってくる)という格言がある。Good thingsがAll thingsやEverythingにまで発展したバージョンもあるが、ストレートな表現で分かりやすく、よく使われる。Rome wasn’t built in a day.(ローマは一日にして成らず)ということわざも有名である。何かを築き上げようとするならば、焦らずじっくり時間をかけることの重要性を説いている。

「焦らずに待つ」ことの大切さを説くことわざが多くあるということは、それが難しいということの証左であろう。ではなぜ、かくも難しいのか?誰かに急かされるから?それもある。競争社会に身を置いているから?それも大きい。だがより本質的には、全ては自分にとって最高のタイミングで起きている、という確信を、我々自身がなかなか持てないからではないだろうか。

しばし想像していただきたい。もし我々に、全ては自分にとってベストなタイミングで起きる、という確信があったら、我々の日常はどうなるだろう?

・・・

そして、このような確信は、どうやったら得られるのだろうか?

・・・

様々な意見がありそうだが、個人的には、自然を観察してはどうかと思う。ほんの少しの間でもいい。身近にある自然を、ただ眺めてみるのだ。例えば今、これを書いている私の部屋から、ロビンの巣が見える。親鳥が卵を温めている。じっと座って、雛が孵るのを静かに待っている。焦っているようには見えない。実に穏やかで、幸せそうで、待つことを楽しんでさえいるようだ。

ロビンだけではない。花も木も虫も、誰も急いではいない。それなのに、全ては完璧なタイミングで起こり、見事な調和が保たれている。Nature does not hurry, yet everything is accomplished. (自然は急がない。しかし、全ては成し遂げられる)という言葉があるが、自然を観察すると、まさにこの通りであることを、改めて思い知らされる。そして、自分はそんな自然の中で生きていることを思い出すと、不思議な安心感が湧いてくるのだが、皆様はどうであろうか。

さて「果報は寝て待て」。今一度、このことわざを口に出し、その大らかさを味わっていただきたい。・・蒔かぬ種は生えぬ、でも種を蒔いたのなら、芽が出るまでのタイミングは、自然に任せなさい。焦って種をほじくり返すのは愚の骨頂。どんな芽が出るのかなと、待つことも楽しいものだ・・。こんなことを、先人に言われているような気にならないか。

冒頭、皆さんに一つ質問をさせていただいた。その際、「まあそうかも」と思われた方は、今までのご自身の経験から、全ては自分にとってベストなタイミングで起きるということを、実は既に、体得されているのかもしれない。

* この記事は、JBSDデトロイト日本商工会の会報、「Views」の2026年6月号に掲載されたものです。

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