22. 心の窓を開ける【コラム:幸せになろうよ – a joyful life】
「ピアノ、どんな感じ?」
アメリカ人の友だちに聞かれ、 “It’s going very slowly.” と答えました。
音がオシャレなジャズピアノが好きですが、曲の中で音とリズムが変化し続けるので、曲に慣れるのに時間がかかります。今、季節に合わせて練習しているのは、September in the Rain という曲ですが、それらしく弾けるようになるのは早くてもクリスマスの頃でしょうか。
目標もなく練習するのが趣味なので、仕上がりが季節外れになっても構わないのですが、練習の成果がまったく感じられず、困惑していました。ある月曜日の夜、少しマシになったかなと思いましたが、翌朝には元の木阿弥。夢と一緒に前日の学びも消えてしまいました。
その週、気功の自習コースを取っていました。火曜日のテーマは Soften Your Intentions(決意や意図を和らげる)でした。ピアノの練習に決意めいたものはないつもりでしたが、さっぱり上達しないことにがっかりしたのは事実です。「そのうちマシになるだろう」という期待があった証拠です。
ビデオを見ながらもう一度気功を練習し、ピアノの前に座りました。まず、上達への期待を捨てることにしました。自分をコーチングのクライアントに見立て、「できなくていい。難しさの原因を興味を持って探ってみよう」と心の中で声を掛けました。
前夜に練習したのは、右手で弾く和音の一番上の音がシのフラット(♭)、ラのフラット、そしてソへと下がっていく小節でした。左手はそのオクターブ下を同じ音とリズムで下がります。楽譜はすっきりしています。右手の小指がソを弾くとき、親指はほぼオクターブ下のラのフラットの上にあります。この音が、両手が弾くソと一緒になって、ジャズらしい不協和音を奏でます。
ところがゆっくり弾いてみると、右手と左手が邪魔し合うようになり、どうも居心地が悪いのです。なるほど、と納得しました。そこで、左手でソを弾くときに、腕全体を体に引き寄せると両手が重ならず、ぐっと弾きやすいことが分かりました。
楽譜ばかりに気を取られ、体で感じていたはずの違和感に気づかなかったようです。カチコチになって頑張っていたことが分かり、苦笑い。そして、少し気が楽になりました。
この曲には難関がいっぱいあります。行き詰ったら、できない現実を受け入れて、ゆっくりと不協和音を楽しむことにしました。
さて、金曜日のレッスンで手が重なる違和感のことを先生に話して助言を求めると、
「左手でソとラのフラットを一緒に弾いて、右手で残りの三音(ド、ミのフラットとソ)を弾けば楽ですよ」
と教えてくれました。これは、最初に楽譜を読んだときに考えたことでした。こういうズル技が好きなのに、心に余裕がなかったせいで真面目一本槍となり、自分を苦しめる羽目になりました。そして楽しめていなかったから、学びも逃げていったのでしょう。頑張りが裏目に出てしまったのは、何とも皮肉です。気楽に練習していた「つもり」が強すぎて、心と体に余計な力が入っていることに気づけなかったのです。自分にこんな盲点があったことに、少なからず驚きました。
この盲点のせいで音楽が「音苦」になるのを防ぐために、頑張ってもダメなときは心の窓を開けて風通しをよくし、遊び心を呼び戻すことにしました。そうすれば、体の緊張もほどけます。
September in the Rain が教えてくれた「窓開け」の大切さ。これは、ピアノの練習以外にも使えそうです。頑張ってもうまくいかないときは、もうひと踏ん張りする前に、まず心の窓を開けてみようと思います。
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